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日本ではゲームといえばテレビやスマホがメインですが、近年、対面で行う非電源ゲームも注目を集めています。人気のボードゲーム・カードゲームを紹介します。
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今回は長めの番外編。行ってきました「ゲームマーケット2020秋」(11月14・15日、東京国際展示場・青海展示棟)の巻です。
ゲームマーケットって?
ゲームマーケット(ゲムマ)とは、2000年に始まった「国内最大規模のアナログゲームイベント」(カタログより)。当初は日本を代表するゲーム研究家、草場純さん(70)を中心とした有志で運営され、10年から大手ゲーム出版・アークライト主催に。近年は東京で春と秋、大阪で3月と年3回開催されています。今年20周年を迎えたわけですが、新型コロナウイルスの感染拡大で今年の大阪と東京・春は中止。午前・午後の入れ替え制▽電子チケットによる全来場者の把握▽検温・アルコール消毒▽搬入用シャッターを開放し換気励行――など感染対策を徹底してようやく開催の運びとなりました。
「開催に当たっては、出展者、来場者、さらには世間から理解が得られるかどうか非常に悩みました」と運営責任者の刈谷圭司・ゲームマーケット事務局長(48)は厳しい表情。6月からアークライト社内で議論を重ね、「このイベントはボードゲーム業界にとって大きな意味を持つと考え開催を決断しました」。右肩上がりに増え続けてきた来場者数も、チケット販売枠を1日9000人に絞ったため、昨年は2日間で2万9300人だったのが、今年は1万3300人に。主催者としては苦渋の決断だったようです。
開場を待つ列は、チケットで指定された入り口ごとに。2回目の参加という埼玉県の男性(35)は「マーダーミステリー(プレーヤーが事件の登場人物を演じながら進める謎解きゲーム)の新作を楽しみにしてきました。物語に没入できるのが魅力」とにっこり。東京都内から来た女性(29)は「こんなご時世なのでオンラインでもできるゲームを探しにきました」。
会場は2ホール
会場は、ホビージャパンなど大手が新作を先行発売したり企画イベントが開催されたりするAホールと、同人サークルの出展ブースが軒を連ねるBホールに分かれます。
まずはAホールの「グループSNE」(神戸市)ブースから。今回はシャーロック・ホームズをテーマにした新作2ゲームをプッシュ。デザイナーで物流部門の責任者でもある黒田尚吾さん(36)は「コロナのため試遊卓が制限されていてアピールが難しい。それでも開催されて本当に良かったです」とホッとした表情。
富山市から海外ゲームのオリジナル日本語版を出版する「Engames」。ドラフトゲーム(配られた手札を1枚選んで残りを他プレーヤーに渡すメカニクス)の新定番となりつつある「イッツアワンダフルワールド」(1~5人用、フレデリック・ゲハー作)が人気を集めています。社長の杉木貴文さん(38)は「ボードゲーム出版は、地方からでも十分勝負できます」と力強い。
500近い同人ブースが集まるBホールは、Aホール以上に熱気にあふれています。通路を歩けば「○○ゲームはどうですか」「少しルール聞いていきませんか」と声を掛けられます。動物や戦国武将のコスプレで客寄せする人も。
新作カードゲーム「インヴァージョン」(2~4人用)を引っさげ6回目の出展となるのは符亀さん(23)。大学生時代に初めてボードゲームに触れて「ビビッときました。そうしたら次々アイデアが湧いてきて」。新作はアートワークも自分でこなす自信作。ソリッドなデザインにひかれてついつい購入してしまいました。
戦利品
筆者はこれ以外にも取材しながら10個近くのゲームや書籍をついつい購入してしまい散財。その中で紹介しておきたいのが、斎藤隆さん(48)作の2人用ゲーム「ビアヘックス」です。対辺を自分の王冠でつなげれば勝ちなのですが、手駒となる13個の王冠の裏側は自分のシンボル7、相手のシンボル6となっていて、裏側のシンボルをつなげなければなりません。裏返すには隣接する3個を指定して「アタック」します。3個すべての裏側が相手のシンボルなら取り除けるのですが、1個でも自分のシンボルが混ざっていると自分のシンボルの駒だけ除去されるというリスクがあります。相手の作戦を読み自分の意図を隠すヒリヒリした心理戦がわずか25のマスを舞台に繰り広げられます。
来年の開催は
次のゲムマは、21年3月28日に大阪、4月10、11日に東京・春が予定されています。しかしながら、通常通り開催できるかどうかはコロナ次第。東京・春は1日開催に短縮する可能性が高いといいます。イベントと感染症対策をどう両立させていくのか。ボードゲーム業界の浮沈がかかるだけに、関係者は祈るような気持ちで推移を見守っているのです。【野地哲郎】=次回は12月5日掲載予定