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記者の目

米国の選択 上下の分断 「持たざる者」救うのは誰=隅俊之(ニューヨーク支局)

ネット中継されたバイデン前副大統領のテレビ演説に聴き入る支持者たち=米東部デラウェア州ウィルミントンで6日、隅俊之撮影

 米大統領選は民主党のジョー・バイデン前副大統領(78)が当選を確実にした。社会を混乱に陥れたドナルド・トランプ大統領(74)の2期目を食い止めたことの意義は大きい。だが、それは砂上の楼閣だ。バイデン氏に投票した人の話を聞いていると、彼が薄氷を踏んで当選をつかんだことが分かるからだ。これからの4年、米国が抱える問題は何だろう。トランプ派と反トランプ派の分断にばかり目を奪われるが、実はどちらにもいる「忘れられた人々」を誰が救うのかということではないかと思っている。

「悪夢終われ」とバイデン氏に

 「私はまだ36歳なのに、このまま底に沈みゆく鉄鋼の町で人生を終えてしまうのかと思うと絶望的な気持ちになる」。中西部ミシガン州リバールージュで出会ったブランディ・フォークスさんは昨年末、業績不振に苦しむ米鉄鋼大手USスチールを解雇された。失業保険は切れ、2週間で400ドルの追加給付金が唯一の収入だが、いずれそれも終わる。朽ちたガソリンスタンドやシャッターを閉じた小売店、税収増の切り札と位置づけられている合法大麻の販売店しかないこの町で、新たな仕事は見つかりそうもない。

 黒人で同性愛者でもあるフォークスさんは、トランプ政権を止めるためにバイデン氏に投票した。古びた高炉が残る製鉄所に依存してきた町の将来が明るいとは思っていない。「ラストベルト(さびついた工業地帯)」がよみがえるには抜本的な産業構造の転換が必要だが、それはトランプ政権以前からの問題だからだ。設備投資も遅れた鉄鋼業が、グローバル化に伴う海外との競争に追いつくのも厳しい。フォークスさんは「誰が大統領になっても、光り輝く明日はすぐには期待できないだろう」とため息をつく。

 取材で痛感したのは、バイデン氏の支持者が、積極的な魅力を感じて投票したというより「反トランプ」という点で一致していたことだ。「なぜバイデン氏を」と尋ねると、「トランプ政権を終わらせるため」という答えがまず返ってきた。東部ペンシルベニア州の最大都市フィラデルフィアの開票所前で、トランプ派とにらみ合っていた大学生のコリーン・バーンズさん(21)は「悪夢を終わらせるために、高齢のおじいさんに未来を託すしかない。それしか選択肢がないのも現実だ」と自嘲気味に話した。

 「トランプ劇場」が生み出した右派と左派の分断。そればかりが注目されるが、米国で本来深刻なのは「持つ者」と「持た…

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