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エンタメノート

21日は命日…談志さんならコロナをどう斬る?~立川談慶さんに聞く

木魚をたたき、時には笑みを浮かべながら語る立川談志さん=東京・赤坂のTBSで2006年11月、藤原亜希撮影

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 「家元、世の中はエライことになってますよ。家元ならなんとおっしゃったでしょうね――」

 11月21日は立川談志さん(1936~2011)の命日。先日、「密」にならないように、ちょっと早めにお墓参りにうかがったら、この日も花がきれいに飾られていた。お元気な時から自分で決めていて、訃報で改めて注目された戒名「立川雲黒斎家元勝手居士(たてかわうんこくさいいえもとかってこじ)」の文字に、ついニンマリ。お墓はリモートカメラで警備もバッチリ。鼠小僧次郎吉のように墓石を削って持っていくような不届き者はいないから安心だ。

 亡くなって9年たつと、悲しみよりも楽しい思い出、ご存じない人には意外に思われるらしい、優しい人柄が思い浮かぶ。

 私たちも敬意を込めて「家元」と呼んでいた。その強烈な生き様は、時がたっても色あせることはない。毎年この時期に開かれていた、ゆかりの人をゲストに招いて一門総出演の落語会「談志まつり」も、今年はそれどころではなく中止に。

 でも、大量の録音と映像、そして本を残してくれたので、この3連休は「我慢」などせず楽しみたい。

     ■

 談志さんが新型コロナウイルスのことをなんと言っただろうかは想像して楽しむしかないけれど、そのヒントになるのが、弟子の立川談慶さんが8月に出版した「安政五年、江戸パンデミック。~江戸っ子流コロナ撃退法」。コロナで誰もが困っている「今」を助ける即効性はないかもしれないけれど、笑い飛ばして前向きになれるヒントを与えてくれる。

 談慶さんは慶応大出身で初の真打ち。兄弟弟子には早稲田出身の立川談笑さんと、早慶出身の弟子がいるのは談志さんだけだ。

立川談慶さん=藤澤正和撮影

 落語家を目指す若者のバイブルでもあった談志さんの「現代落語論」は今も販売されているロングセラー。そして多くの本を出したけれど、立川流の弟子も本を数多く書いている。

 談慶さんは今年だけで5冊もの本を出し、いずれも好調だ。小説も執筆中で来年には出版予定という。

 「落語の仕事が飛んだというのもありますけど(笑い)、執筆の時間ができたというのと、(兄弟子の立川)談四楼師匠や談春兄(あに)さん(の本)は『実録ドキュメンタリー路線』じゃないですか。だからキャラがかぶっちゃうから、フィクションをベースにして小説を書いてます。やっと書き方のコツがわかってきたというか、軸足は落語に置いて、わかりやすい形で」

 落語の本はマニアックで正直あまり売れない。でも、談慶さんの本は、落語と、落語に詳しくないビジネスマン、サラリーマンを見事につないだ切り口が魅力だ。

 「それも、師匠・談志の教えがあるからこそ。師匠だったら、なんて言うかなというのはあるんです」。やはり談慶さんもそうだった。

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 談慶さんは今、どんな心持ちなのだろう。

 「最初の頃は、コロナに打ち勝つ、敵とみなして制圧する、というような意気込みで来たけれど、それは短期的な発想で向き合った結果、浮かんだ考えだと思うんです。すぐに決着出せって」

 そういえば「2週間で」と強調していた首相もいたっけ。

 「もう今は長距離ランナーの姿勢で、長期戦だなとシフトしなきゃいけない。勝ち負けではないんです。ワクチンができるまで、個人がしなやかさで対応することで時間的、心理的なゆとりというものを持ちましょうよ。そんな気持ちでいれば、長丁場をこらえることができるんじゃないかと」

 寄席や落語会も、これまで通りとはいかない。

 「落語会もいろいろな方策をした上で、お客さんがどなたか分かった上で、会員制みたいな形で数をこなしていく。500人の会場で満杯の会というのはしばらくできないと思って、50人ぐらいの会を数多くするとか。地域寄席みたいな形も増える予感もあるんです。料亭やレストランで、対策を徹底して、単価を高くした食事つきの会も増えるかもしれない。数をこなすか、単価を上げるか、両極化すると思うんです」

     ■

 談志さんは「業(ごう)の肯定」や「現実は事実」という言葉をよく使った。

 「現実を直視しろ、折り合いをつけるしかない、ということです。理想はこれだけのお金をもらいたいけど、現実はそうはいかないので、そこからスタートするしかない。このギャラじゃないと落語やらない、というわけにはいかないと思うんです。今、お客さんも、客席満杯のところはちょっと二の足を踏んじゃってるし、年輩の方だと、外出しようとすると家族から『おじいちゃん、今はおよしよ』と言われてるみたいだし」

 だからと言って、そこで暗くなっていては何も進まない。

 「そう、昔のスタイルができないだけで、こっちが対応するしかないです。オレはそんなところではできない、とは言ってられないと思うんです。お客さんはこの状況でも落語を聴きたがっているというのがありますから、ギャラを少なくしたり泣いてもらったりして、会場費もちょっと安くしてもらってと、(落語の演目)『三方一両損』のように、みんながつらさをシェアするみたいな形なら、落語ができる。そういう形で次につないでいきたい」

 談志さんも、落語協会を飛び出して落語立川流を創設して、寄席に出演できなくなった。そこから弟子たちは自分で落語ができる場を作り出していった。志の輔さん談春さん志らくさん以降の直弟子は、その苦労を知っている。

 「三方一両損」ではないが、古典落語の長屋の世界の江戸っ子のように、生活は楽でなくても、文句など言いながら、助け合って生きていく。しばらくはそんな心持ちで過ごしたい。談志師匠を聴きながら。【油井雅和】

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