メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

疫病を恐れる庶民が…

[PR]

 疫病を恐れる庶民がおまじないに頼った昔だった。京都では疫病よけに「上(じょう)酒有(ざけあり)」と書いた紙を戸口に張ったという。酒を売り歩く妖婆(ようば)が病を広めるとの俗説があり、この紙を張れば近づかぬというのだ▲文人の大田南畝(おおたなんぽ)はこの話を聞き、「酒は池のごとくあり……謹(つつし)んで妖婆に謝(絶)す」との狂詩で迷信を笑った(磯田道史(いそだ・みちふみ)著「感染症の日本史」)。その南畝は、やはり病よけのお札とされた「釣船清次(つりぶねせいじ)」の由来を随筆に記している▲江戸の釣り船屋清次が突然現れた大男に釣った魚を与えると、男は疫(やく)病(びょう)神(がみ)だと名乗り、おまえの名を張っておけば家に入らないと約束した。「釣船清次」は病よけの札となったが、南畝は実は大男が盗賊だったとのオチをつけている▲各地で似た疫病よけの張り紙やお札の話が多いのには、疫病を家から遠ざけたいという昔の人の切実な思いが表れていよう。しかし新型コロナの新たな感染拡大局面を迎えた今、以前より明らかに増えているのは家庭内の感染という▲東京では感染経路の分かる新規感染者の4割以上になる。疫病神ならぬウイルスを家に持ち込むのは、自分の感染を知らない家人である。家庭内感染の増加は今までの夜の街などのホットスポット対策が通用しない局面を表している▲この感染拡大の局面でGoToキャンペーンを進め、マスク会食を推奨するだけの政府は、公衆衛生の責任を国民個々に丸投げしていまいか。今は家々がそれぞれに張るお札にすがるしかなかった時代ではない。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 大人気、耳にかけないマスク 「小耳症」の人にも 誰もが当たり前に着けられるように

  2. 無期転換パートの待遇改善請求を棄却 正社員と異なる労働条件指摘 大阪地裁判決

  3. 「桜を見る会」答弁 菅首相「事実が違った場合は私にも責任」 衆参予算委詳報

  4. 「感染を制御できない」 専門家に強い危機感 会合後に漏れた本音

  5. ソフトバンクの選手が付けている目の下の「黒いアレ」って何?

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです