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障害者の高校不合格 文科省はまず実態調査を

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 障害のある生徒が公立高校を受験し、志願者数が定員に満たないのに不合格となる例が後を絶たない。「定員内不合格」と呼ばれている。

 障害があるために入学できないとすれば、教育を受ける権利を損なうものだ。

 支援団体によると、不合格となるのは知的障害があったり、人工呼吸器を装着し医療的ケアが必要だったりする生徒だ。複数年受験し、合格できないこともある。

 入学の可否は学校長が決める。受け入れ態勢の不備などが理由とみられるが、学校側に聞いても説明されない場合が多い。統計がなく、実態は分かっていない。

 高校入試を巡っては、旧文部省が1984年、一定の成績や適性が必要とする「適格者主義」を改めるよう教育委員会に通知した。進学希望者の学ぶ機会を広げるのが目的だった。

 障害があっても合格するケースが増えた一方で、地域や学校によって対応に差が出ている。

 文部科学省によると、昨年度、定員に達していなくても「不合格にする可能性がある」と回答したのは32の道府県に上った。「原則、不合格としない」のは15都府県にとどまった。

 東京都、神奈川県、大阪府は定員内での不合格を出さない方針を掲げている。住んでいる地域で合否が異なるのは不合理である。

 日本が批准した障害者権利条約は、障害の有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」の確保をうたう。障害者差別解消法もできた。

 高校の授業料も無償化された今、高校で学ぶ権利は最大限、保障されなければならない。

 萩生田光一文科相は国会で「都道府県のみなさんとよく話し合ってみたい」と述べた。文科省はまず本格的な実態調査を行い、結果を公表すべきだ。

 高校進学を希望して7年間浪人した千葉県成田市の渡辺純さんが昨年、願いがかなわないまま21歳で亡くなった。脳性まひで、たんを吸引するケアが必要だった。

 小中の同級生には、一緒に学んだことで看護師や教師の道に進んだ子もいるという。共に学ぶ意義を共有できることが真の共生社会につながるのではないか。

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