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菅首相の声だけ流れる「グループインタビュー」はなぜ行われたのか

グループインタビューの音声だけが流された首相官邸の記者会見室=2020年10月5日、畠山理仁さん撮影・提供

 日本学術会議の新会員候補6人の任命拒否について菅義偉首相が1カ月あまり前、初めて「総合的・俯瞰的」という言葉を持ち出したのはどのような場だったか、読者は覚えておいでだろうか。それは記者会見ではなく「グループインタビュー」だった。限られた報道機関の記者が首相に質問し、やりとりの音声だけを他の記者が別室で聞く形式で、ネット上では「なぜ記者会見をしないのか」「異常だ」などの批判が広がった。なぜそのような情報発信が行われたのかを検証した。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】

誰もいない会見室の「異様な光景」

 グループインタビューがあったのは10月5日と9日だった。5日は北海道新聞、読売新聞、日経新聞、9日は毎日新聞、朝日新聞、時事通信の記者が約30分間、首相にインタビューした。首相官邸の記者クラブ「内閣記者会」に常駐する19社の報道機関の記者は室内で傍聴できたが、それ以外の記者は別室に流される音声を聞くことしかできなかった。また、コロナ対策として常駐19社以外に別室に入れるのは抽選で10人に制限された。

 「あれでは『菅首相とされる人物のインタビューらしき音声』としか書けませんよね。菅さんはデジタル庁をつくると言っているのに、映像すら見せないなんて時代に逆行しています」と、5日に傍聴したフリーランス記者の畠山理仁さん(47)は皮肉る。

 傍聴用の別室は、通常は首相や官房長官の記者会見に使われる会見室だった。壇上に誰もいない会見室で記者たちがスピーカーからの音をパソコンに打ち込んでいる姿は異様だったと畠山さんは言う。「普通に記者会見をすればいいんじゃないでしょうか。記者は国民に代わって政府に質問をしています。記者の属性が限定されない形で記者会見をしてほしい」

「菅首相の発信は心もとない」

 フランス出身で元AFP通信のフリーランス記者、カリン西村さん(50)は9日に傍聴し、音声をネットに公開した。「菅首相が何も説明をしていないことが分かると思ったからです」

 西村さんによると、マクロン仏大統領は新型コロナウイルスの感染拡大前までは数百人の記者の前で約2時間の記者会見をしたこともある。閣僚たちは朝のラジオ番組に頻繁に出演し、リスナーからの質問にも答える。そうしたフランスの政治家に比べると、菅首相の発信は心もとなく感じるという。

 「国のトップがメディアの質問に答えることは重要な仕事です。菅さんはマクロン大統領との共同記者会見があったら、どう乗り切るんでしょうか」

 畠山さんや西村さんらが傍聴の様子の写真や音声をネットに公開すると、SNSでは「権力者に謁見できるのは限られた代表者のみ」「会見すらまともに行えない政府ってなんでしょうか」など多くの批判が上がった。

「インタビューの申し込みがあったので」

 なぜ記者会見ではなくグループインタビューだったのか。

 官邸報道室の富永健嗣室長はこう説明する。…

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木許はるみ

1985年生まれ、愛知県出身。中日新聞、Business Insider Japan、じゃかるた新聞を経て2020年入社。外国人住民、公害、地方議会の取材をしてきた。アートや科学が好き。

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