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#全集中!「鬼滅の刃」考

「世界鬼学会」会長と読む 日本人が「鬼滅」にひかれる訳

辞書に並ぶ鬼に関する言葉=東京都千代田区で2020年11月18日、丸山博撮影

 今や社会現象となった「鬼滅の刃」。10月末のハロウィーンでは、モンスターや幽霊に代わって、鬼滅のキャラクターに仮装した子どもや芸能人も多く見られた。思えば「鬼」は日本では最もなじみの深い、元祖モンスターと言える。どのようにして誕生し、現代にまで伝えられてきたのか。そして鬼滅の刃の作品世界にどう受け継がれているのだろう。民俗学者で、鬼を研究する世界の学者らで作る「世界鬼学会」会長でもある八木透・佛教大教授に詳しく聞いてみた。【大野友嘉子/統合デジタル取材センター】

 ――本題に入る前に、まずは「鬼学」とはどんな学問なのですか?

 ◆鬼学は、人間が鬼に託した哀感や、鬼と人間とのかかわり、さらに鬼を通して人間の本質を探るなど、幅広く研究する学問です。私は民俗学の見地から、日本各地の鬼にまつわる伝承や祭事などを研究してきました。他にも歴史学や、文学、美術などの見地から研究している人もいます。

 「鬼」自体は日本固有のものですが、それに類する魔物については世界各地に伝説があります。その研究をする主に日本、中国、韓国の学者、作家、芸能関係者らが1994年に設立したのが世界鬼学会です。「鬼と遊び、鬼について学びあう」をテーマに、各地に伝わる鬼(魔物)の伝説や、「鬼」のつく名前など、鬼にまつわる研究成果を発表しています。今年に入ってからは「鬼滅」の人気で、鬼について教えてほしいという依頼がたくさん来るようになりましたね。この取材もその一つです(笑い)。

日本の鬼伝説の伝統にかなった「鬼滅」の描写

 <「鬼滅の刃」に登場する鬼たちには、容姿が醜いとさげすまれたり、貧しさから抜け出すために物を盗んだり、努力が報われず苦しんだりした過去を持つ。主人公の竈門炭治郎は鬼との戦闘を通して、彼らの悲しい生い立ちとも向き合う。>

 ――「鬼滅の刃」では、鬼たちがさまざまな事情を抱えていた人間だったということが分かる描写がみられます。古来の鬼物語との共通点を教えてください。

 ◆鬼が元々は人間だったという「鬼滅の刃」の設定は、日本の鬼伝説の主流の考え方と合致しています。妬みや欲、恨みといった人間らしい、人間くさい感情が、人を鬼に変えるのだということを描いているのです。

 「鬼滅の刃」の鬼たちも、どこか悲哀を持っています。心の弱さにつけ込まれ、鬼に変わってしまう人もいます。その背景が丁寧に描かれ、切ないストーリーになっています。鬼は人間の映し鏡です。鬼を知ることは、人間の本質を知ることなのです。人間の情念がちりばめられた古来の鬼物語の構図を上手に取り込んでいますね。

 ――例えばどんな物語があるのですか?

 ◆歌舞伎の演目にもなっている「鬼女紅葉(きじょ・もみじ)」伝説は、好例でしょうね。会津生まれの美女、呉葉(くれは)が京の都へ行き、紅葉の名で為政者の寵愛(ちょうあい)を受けます。しかし、やがて野心が芽生え、悪事に手を染めていく。それらが発覚して信濃の山里に流され、鬼女になり、冷泉天皇による征伐令が出されるという物語です。

 注目すべきなのは、…

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