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「でも、もう一度やれる」完敗から栄冠へ 貴景勝、立ち戻った原点の突き押し

照ノ富士(右)を押し出しで降し、優勝決定戦を制した貴景勝=東京・両国国技館で2020年11月22日、喜屋武真之介撮影

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 大相撲11月場所は22日、東京・両国国技館で千秋楽を迎え、大関・貴景勝が、小結だった2018年九州場所以来2年ぶり2回目の優勝を果たした。大関の優勝は17年初場所の稀勢の里以来22場所ぶり。貴景勝は来場所で綱取りに挑む。

 最後に土俵に立っていたのは貴景勝だった。観客のマスクから、声にならない声が漏れる。遅れて響き始めた拍手が鳴りやまない。浅く息を吐き、こみ上げる思いをこらえた。「応援してくれた人の期待に応えられて本当に良かった」

 本割は完敗だった。立ち合いから照ノ富士を何度突き放しても崩せない。組み止められると、浴びせ倒しであおむけにされた。背中にべっとりと土を付け、情けなさをかみしめて支度部屋に戻った。「でも、もう一度やれる。一生懸命相撲を取ろう」と切り替えた。

優勝決定戦を制し、表彰式で賜杯を受け取る貴景勝=東京・両国国技館で2020年11月22日、喜屋武真之介撮影

 優勝決定戦は「初めて脳を止めて、体に任せた」。貫いたのは押し相撲。相撲を始めた小学生の頃、ただ強くなって活躍したいと思っていた中で「自分は体が小さいから突き押しを目指すしかない」と選んだことを思い出した。1発、2発、3発。腰を下げて押す。貴景勝の相撲だ。本割の力関係を逆転させ、一方的に押し出した。

 小結で初優勝した2年前を「夢みたいだった」と振り返る。新大関となって注目が増した昨年夏場所。「突き押しだけで上を目指せるのか。四つ相撲も覚えないと」との声が周囲にあった。だからかどうかは本人は語らないが、慣れない四つ相撲を試みた結果、膝のけがで途中休場した。「思い描いたものと現実が違い、突破口を見つけようといろんなことを試した」。翌名古屋場所を全休し、関脇への陥落も経験した。

 そんな昨年8月、母校・埼玉栄高でリハビリし、後輩たちと2カ月間にわたって寝食をともにした。その生活の中で初心を取り戻した。よりどころとなるのは、やはり突き押し相撲だと気付いた。

 同9月の秋場所で12勝を挙げて大関復帰を決めると、今年は新型コロナウイルスの影響で夏場所が中止になるなど日常が奪われる中、年間最多勝となる51勝で安定感を示した。「大関に上がってから、あまり良いことがなかった。もうひと踏ん張りしないといけないと思っていた」。優勝インタビューで本音がのぞいた。

 来場所は綱取りが懸かる。だが「強ければ勝つし、弱ければ負ける。自分と向き合ってやっていきたい」。もはや重圧にも雑音にも惑わされることはない。【黒川優】

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