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米スペースX社が開発した宇宙船に乗り組み、野口聡一さんら4人の飛行士が国際宇宙ステーションに到着した。宇宙開発における「官から民へ」の流れを印象づける出来事だ。
スペースXは2002年創業のベンチャー企業だ。使い捨てが常識だったロケットの再利用技術を世界で初めて確立し、打ち上げ費用を大幅に削減した。
有人宇宙船の開発過程で爆発事故が起きたが、約1年後には有人での試験飛行を成功させた。月旅行ビジネスも見据える。常識破りな発想を高い技術力と豊富な資金で実現させるのは、挑戦が売り物のベンチャーならではだ。
日本の宇宙開発の担い手は、三菱重工業やIHIエアロスペース、三菱電機といった大企業だ。9割が「官需」で、民需の比率が高い欧米とは異なる。
官需による少量生産では、コストは二の次になりやすい。それが技術革新を阻み、国際競争力の低下を招く恐れがある。
こうした状況でも、宇宙に商機を見いだそうとするベンチャーの創業が、国内でも相次いでいる。
「誰でも宇宙へ行ける」を合言葉に、乗客を高度100キロまで運ぶ輸送機の開発に取り組む企業がある。他に宇宙ごみの回収技術や月面探査車の開発、人工衛星情報を防災や農林業に活用するサービスなど、分野も業種も多様だ。
政府は「宇宙産業ビジョン2030」を策定し、裾野を広げることを目指している。現在約1・2兆円とされる市場規模を、30年代には倍増させる目標も明記した。
2年前に施行された宇宙活動法では、人工衛星の打ち上げ事業を民間に開放する一方、失敗した場合には損害の一部を国が補償する仕組みも整えた。
それでもベンチャーの苦境は続く。人材は大企業に集中している。目に見える成果がないと投資を得にくい。民間専用の打ち上げ施設など、宇宙ビジネスを展開するための環境も整っていない。
日本の宇宙技術は米、欧、露、中に続く高水準だ。発展途上のベンチャーを支援することで競争が生まれ、新しい発想や技術が需要を喚起する好循環が期待できる。優れた技術の蓄積を「宝の持ち腐れ」にしない努力が求められる。