その中に、大友(おおともの)村主(すぐり)に従っていた少年が混じっているのは、一日も早く伊賀(いがの)王子(みこ)と大友氏を親しませようとの鎌足(かまたり)の計らいだろう。
「麻呂(まろ)と申します。以後、よろしくお願いいたします」
と額田(ぬかた)に頭を垂れた少年は利発そうで、愛らしい面差(おもざ)しといい、なるほど伊賀王子の舎人(とねり)にはもってこいだ。加えて、大友村主の遠縁に当たる麻呂は、生家では三人の弟妹の世話を一手に引き受けていたそうで、早くも摑(つか)まり立ちを始めた御子の世話も巧みであった。
だがそんな一見、朗らかな宮の光景とは裏腹に、遷都に反対する人々の声はいよいよ高くなり、額田の配下の宮人(くにん)の中にも、不安を口にする者が現れ始めた。
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