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余録

「ドアを出ると、自衛隊のバルコニーが見えるのよね…

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 「ドアを出ると、自衛隊のバルコニーが見えるのよね。そこに5、6人がいて、ノイズが聞こえてきて……」。ちょうど50年前、東京・市ケ谷の東部方面総監部のバルコニーには三島由紀夫(みしま・ゆきお)の姿があった▲目撃者は、その2年後にシンガー・ソングライター、荒井由実(あらい・ゆみ)としてデビューする松任谷由実(まつとうや・ゆみ)さんである。当時16歳のユーミンは後の作詞家、松本隆(まつもと・たかし)さんの事務所を訪れ、事件に遭遇した。後年行われた2人の対談で語り合っている▲中川右介(なかがわ・ゆうすけ)さんの「昭和45年11月25日」(幻冬舎新書)で知った話だが、対談で松本さんはこの事件により「時代は変わる」と思ったと話している。「あれとあさま山荘事件でね。『時代は変わる。じゃあ作詞家になろうかな』って」▲本の題名はもちろん三島が自衛隊の決起を訴えた末に割腹自殺した日である。その半世紀後は、彼と東大全共闘の討論の記録映画が若者らを驚かせ、代表作といえない娯楽小説「命売ります」が時ならぬ売れ行きを示すなかで迎えた▲「私は諸君の熱情は信じます」。三島は全共闘との討論の最後にこう述べていた。しかし当人は1年半後に劇的な自死を遂げる。全共闘が象徴した左派の急進主義もあさま山荘事件などを通し若者の支持を急速に失い、自壊してゆく▲松本さんの予言は的中して、時代は消費社会の中の優しさや共感を歌う世となった。それも今は昔である。もしや今日の閉塞(へいそく)感の背後には巨大な精神の空洞がひそんではいまいか。50年前からの問いかけである。

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