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結局のところ、あの日の運勢はよかったのか悪かったのか判断がつかない。追いまわされ、殺されかけはしたものの、結果的には死なずに済んだ。その意味ではついていたが、切れ目なく災難がつづいたせいでひどい一日だったという印象ばかりが残っている。
途中で庇(ひさし)にぶつかったおかげで落下の衝撃がやわらぎ、落ちた場所が植えこみだったこともあって怪我(けが)の程度は軽度に抑えられた。左足首と肋骨(ろっこつ)二本の骨折のほかは、あちこちすり傷だらけにはなった。縫合した裂傷も二箇所あるが、せいぜいそれくらいだ。
さすがに落ちきった直後は動揺がおさまらず、自分の体のどの部分を動かせるのかすらわからなくなりなかなか起きあがれなかった。が、即座に駆けよって涙声で呼びかけてきたハナコ(﹅﹅﹅)に返事して、しゃがみこんだ彼女にゆったりと抱きしめられると視界がみるみる明るくなってゆく。いきなり血が通いだしたみたいに頭の働きももどってきて、横口健二は素直にひとこと「よかった」と声をもらすことができた。エンドルフィンだ…
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