今年でデビュー45周年を迎えたバイオリニスト、千住真理子さん(58)は、新型コロナウイルスの感染拡大でコンサートの予定が5カ月間なくなり、一時は絶望や恐怖に見舞われたという。自粛期間中、音楽とは何かと自問し続けた千住さんが苦悩の果てに至った境地とは。
秋雨の夕刻だった。室内にも窓外のけだるさが流れ込んでいたが、千住さんがバイオリンを構えると、そこだけがステージのようにパッと華やいだ。バイオリンを凝視していると、申し訳なさそうに一言。「このバイオリンは『例のバイオリン』ではないの。(持ち運びは)湿度の管理なんかが大変で」
「例のバイオリン」とは2002年夏、千住さんが「運命的に出会った」と話すストラディバリウス「デュランティ」。目利きの楽器ディーラーがかけてきた一本の電話から、すべてが始まった。「すごいストラディバリウスがある」と誘われ、横浜市のホールで対面した衝撃を、千住さんは鮮明に覚えている。1716年製、ストラディバリ最高傑作の一つとされる名器。時価数億円。「資産もアテもないし、ちょっと弾いたらすぐ返すつも…
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