メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

恋ふらむ鳥は

/161 澤田瞳子 画 村田涼平

 新都と定められた近江滋賀郡(こおり)の整備が完了し、東西四里(約一キロメートル)、南北十六里(約四キロメートル)あまりの地に条里が整えられたのは、翌年一月であった。

 通常の遷都であれば、旧宮の官衙(かんが)は解体され、用材は新宮に運ばれて再利用されるが、なにせ飛鳥から近江は遠い。そのため新都の建物は宮といわず官衙といわずすべて新築され、爽やかな木の香りが京じゅうに漂っているとの話が飛鳥にもたらされた。だがそれでもなお都の人々は、「やっぱり、移らねばならぬのか」と、暗い顔を見合わせ続けていた。

 近江京は狭い。ぐずぐずしていては、便利な土地から人に奪われると理解している大臣・大夫たちは、渋々ながら近江に屋敷を建て始めている。とはいえだからといって、父祖の地への愛惜の念がすぐに消えるわけではない。むしろ、すでに僧侶が近江に去って無人となった寺や、野遊びの人々が減った甘樫丘(あまかしのおか)の様に心細くなったかのように、新邸が完成してもなお、飛鳥を引き払わない者が続出した。

この記事は有料記事です。

残り658文字(全文1098文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 感染症と闘う 新型コロナ/6 マスク着用に一定の効果

  2. お年玉付き年賀はがきの当選番号決まる 賞品引き換えは7月20日まで

  3. 共通テスト、マスクから鼻出して「失格」 監督者の注意に従わず

  4. 宮古島市長選 新人・座喜味氏が現職破り初当選 「オール沖縄」勢力が擁立

  5. 横浜から鳥取までタクシー代23万円不払い 詐欺容疑で逮捕 鳥取県警

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです