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メキシコで1986年6月22日に行われたサッカー・ワールドカップ準々決勝は開始前から他と違う「特別な試合」だった。4年前のフォークランド紛争で戦ったイングランドとアルゼンチンの対戦だからだ▲試合後もこのゲームは半ば伝説化する「特別な試合」となった。アルゼンチンのマラドーナ選手が11万5000人の観衆を前にやってのけた「神の手」ゴールと、「5人抜きドリブル」によるゴールという二つの離れ業のためである▲「手で触れたが、神のおぼしめしにより許された」とは誤審によるゴールを「神の手」の御業(みわざ)とした当人の釈明である。「5人抜き」はその3分後の2点目で、アルゼンチンはこの数分間で歴史的対戦を制してW杯優勝に道を開いた▲もしも怪しい「神の手」ゴールと、みごとな「5人抜き」ゴールが別々の試合で行われていれば、こうまでマラドーナ氏の人気は沸騰しなかったろう。神様はその愛する選手に、誰にもまねできぬ特別の数分間を与えたのに違いない▲だが超絶妙技とちょい悪プレーという光と影の交錯が生んだスーパースターは、やがて実生活で広がった影にのみ込まれる。薬物やアルコールへの依存が心身の健康をむしばんだ。しかしファンはその衰えない毒舌までも愛し続けた▲「天国にもサッカーがあって、プレーできたらうれしい。ただペレにはいてほしくないね」。ライバルのペレ氏へのあてこすりはその十八番だが、60歳という年齢で召されたのは神様にも愛され過ぎたのか。
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