新型コロナウイルスの「第3波」に対応するため、感染が急増している地域との往来を控えることなどを、政府の分科会が提言した。
医療現場で悲鳴が上がる中、飲食店の営業時間短縮などを求めたのに続く、矢継ぎ早の対応だ。
専門家は、東京都や名古屋市などで警戒のレベルが高まっていると判断し、今後3週間は飲酒を伴う会食の自粛や在宅勤務などの対策を徹底するよう訴えている。
こうした危機感を、政府はしっかり受け止めているのだろうか。
政府は先週、提言を踏まえて「GoToキャンペーン」の一部停止を決めた。トラベル事業は来月15日まで、大阪、札幌両市への旅行を割引の対象外とする。イート事業は食事券発行の一時停止を都道府県に要請した。
しかし、これでは中途半端だ。移動そのものが感染リスクを高める。トラベル事業は、感染急増地域に向かう旅行だけでなく、出発地とする分も停止すべきだ。
分科会はかねて、医療体制が崩壊する事態を防ぐには、感染急増地域をトラベルから除外することが必要だと提言してきた。
それなのに、政府は地域除外の手続きすら決めていなかった。このため国と自治体の役割分担があいまいになり、除外の判断を押しつけ合って対応が遅れている。
東京都の扱いが宙に浮いているのもそのためだ。一方で都は、飲食店などに営業時間短縮を要請しており、ちぐはぐさは否めない。
国と地方が連携を強化し、感染防止策を機動的に打てる体制を整えるべきだ。
そもそも、トラベルのリスクをことさら低く見せようとする姿勢に問題がある。
菅義偉首相は、延べ4000万人の利用に対し、感染者が約180人にとどまるとの数字を引き合いに出し、「感染拡大の主要な原因という証拠はない」との説明を繰り返している。
しかし、無症状のまま感染を広げる可能性もある。そうした分析は不十分だ。気の緩みにつながる誤ったメッセージにならないか。
トラベルの成果にこだわる首相の姿勢が、方針転換の議論をためらわせてきたのであれば、弊害は大きい。今は感染封じ込めを優先し、強くブレーキを踏む時だ。