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「100%デマですやん」 ある日ウィキペディアに自分の名前が載ってしまったら…

写真は島袋隼士さん=本人提供

 自宅のパソコンで「千人計画」と検索したら、なぜか自分の名前が出てきた――。中国内陸部にある雲南大の助教、島袋隼士さん(33)は10月、フリー百科事典「ウィキペディア」の千人計画のページを見て、目を疑った。「参加者リスト」に自分の名前が載っていたからだ。千人計画には一度も参加したことがないのに。どうして? 突然の「デマ」騒ぎに遭遇した島袋さんに体験談を聞いた。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】 

 千人計画とは、中国政府が海外在住の研究者を国内に招請するプログラム。日本学術会議が積極的に協力しているとの誤った情報が出回り、一気に注目を集めた。

 中国在住の研究者である島袋さんも千人計画のことが気になり、パソコンでウィキペディアを閲覧した。すると、「千人計画に参加した日本人」という項目に「島袋隼士」という名前があった。

 「あれ、よく見る名前があるなあ。自分の名前だ。僕っていつから千人計画に参加していたんだっけ」。すぐには何が起きているか把握できなかった。次の瞬間、ギョッとしたという。島袋さんは2018年から中国の大学に所属しているが、千人計画には一度も選ばれていないのだ。

 「参加者リスト」の「島袋隼士」に記載されていた出典を確認すると、毎日新聞の記事とネットメディア「ニューズピックス」の記事だった。

 毎日新聞の記事(18年10月)は、よりよい研究環境を求めて中国に拠点を移した日本人研究者の一人として島袋さんを紹介しているだけだ。「千人計画」は、一度も出てこない。ニューズピックスの記事(19年6月)も中国の潤沢な研究予算や島袋さんの体験談を伝え、後段で千人計画に触れている。ただ、島袋さんが千人計画に参加したとは書かれていなかった。

 島袋さんは、名古屋大学大学院で博士号を取得し、フランスのパリ天文台、中国の清華大学の研究ポストを渡り歩き、中国の宇宙研究の拠点の一つ、雲南大に採用されている。日本のポストにも応募してきたが「全滅」。研究を続けるために海外に渡ったのだ。

 「自分には千人計画に選ばれる業績はまだまだ足りません」と島袋さん。ウィキペディアの千人計画の「参加者」リストには、各界の権威の名前がずらりと並ぶ。「自分がリストに載るなんて、できすぎたこと」。同世代の同僚を見渡しても千人計画に選ばれた研究者はいない。「まったくの火のないところに立った煙」だった。

 「千人計画に参加した日本人の中に私の名前があって笑った。100%デマですやん」。10月20日にツイートすると、約270リツイート(再投稿)されるなど大きな反響があった。

 続けて、「最初は笑ったけど、これは良くないですねぇ」と投稿した。知り合いの中国在住の日本人研究者がSNSで中傷を受けていた。「自分も(中傷を)投げかけられるのかな。こういう誤解は良くないな」と思い返したからだ。

 島袋さん自身も、ウィキペディア掲載前の10月3日に、千人計画と軍事研究の関係を否定した国会議員の投稿にリプライしたところ、なぜか第三者から「売国奴」などとリプライを受けた。中国で研究しているというだけで攻撃されそうな空気なのだ。

 ひょっとして、ほかのところにも自分の名前が――。ネット上で自分の名前を検索する通称「エゴサーチ」をしたところ、まとめサイトの千人計画に関連した「記事」に自分の名前が挙がっていた。「記事」は、ウィキペディアと同じく毎日新聞の記事から島袋さんの名前を持ち出し、島袋さんも「怪しい」と書かれていた。

 また「売国奴」などと書き込まれるのではと心配したが、ウィキペディアの掲載後、目立った中傷はなかった。そのまま掲載を放置していたところ、「参加者」リストから自分の名前がなくなっていた。なぜ消えたのか。その理由にはウィキペディアの編集方針と善意の第三者が関わっているが、長くなるので後述したい。

 島袋さんは取材に、「僕の名前や出典を書いた人はバレないと思ったのかもしれません。しかし、それが当の本人の目に留まるという何とも言えない展開ですよね。(研究の)本業でウィキペディアに名前が載る…

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残り2791文字(全文4479文字)

木許はるみ

1985年生まれ、愛知県出身。中日新聞、Business Insider Japan、じゃかるた新聞を経て2020年入社。外国人住民、公害、地方議会の取材をしてきた。アートや科学が好き。

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