会員限定有料記事 毎日新聞
開園37年になる東京ディズニーランド(千葉県浦安市、TDL)の人気を悪用し、個人経営の居酒屋を訪れ、架空の豪華招待ツアーを持ちかけて現金をだまし取る詐欺事件が今夏以降、神戸市内で相次いだ。容疑者の男は10月に県警に逮捕されたものの、被害に遭った男性店主(43)は「今思えば、おかしい点はたくさんあったが、トントン拍子で話が進み、だまされたことに気づけなかった」と悔やむ。運営会社の社員を名乗り、店主を翻弄(ほんろう)した手口とは--。【春増翔太】
神戸市中央区のJR元町駅近くの和風居酒屋に男が訪れたのは10月22日、閉店時間が迫る午後11時半ごろだった。
セーター姿の男は息を切らしながら来店し「10月30日に6人で予約をしたい」と口を開いた。アルバイトの女子大学生(24)が水を出し、店主が予約内容を確認すると、男は「実は自分はディズニーランドを運営する会社の人事課長で、仕事の会食に使いたい」と説明。「山口」と名乗った。携帯電話の番号も伝えたという。
店主はTDLに行ったことはない。ただ、アルバイトの女性はTDLの大ファン。営業を終えていたが、店主は仕事終わりに自分が飲む瓶ビールを男にもつぎ、3人で話し込み始めた。真偽不明なアトラクションの裏話やディズニー作品の物語……。よどみなく語る男は「役員クラスしか持っていない非売品」と言いながら、ディズニーのキャラクターのキーホルダーを見せた。
男は店や店主のことも褒めそやした。「すてきな店に出会えた」「いい大将だ」。女性にも「あなたみたいな子を採用したいが、なかなかいない。良かったら、うちに就職しないか」と持ち上げた。
話が盛り上がった頃、「『夢の国』には、知られていない本当に夢のような特別ツアーがある」と切り出した。
「弊社が全面的に招待する。往復の新幹線とセットで併設ホテルの特別室に宿泊してもらい、限定品の土産がつく」「総理大臣でも入れないシンデレラ城の最上階に行ける」「どのアトラクションにも一切並ぶ必要がない」「それがいくらだと思います? 1人1万5000円です」
耳を疑った店主らに、男は何度も「限られた役員クラスしか扱えない話」と繰り返した。そして「今日は本当に良い出会いを頂いた。良かったら、そのツアーを手配するが」と持ちかけた。
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