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不機嫌に黙り込んだ葛城(かつらぎ)のかたわらでは、一刻ほど前に馬で近江から戻ってきたばかりの鎌足(かまたり)が胡坐(あぐら)をかいている。この半年あまり、数日おきに近江と飛鳥を往復しているせいで、顎(あご)の長い顔が真っ黒に日焼けしていた。
ともに無言を決め込む葛城と鎌足に、大(おお)海人(あま)が引くに引けぬ様子で目をさまよわせる。その癖、灯影の落ちる床にぐいと足を踏ん張ったまま立ち去らぬ彼に、房の片隅に控えていた額田(ぬかた)はしかたなく、「それは、大海人さまお一人のお考えですか」と声をかけた。
「おお、当然だ。おぬし、何が言いたいのだ」
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