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余録

江戸時代の享保年間…

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 江戸時代の享(きょう)保(ほう)年間、インフルエンザと思われる感冒(かんぼう)がはやった折、「人々はわらで疫神(えきじん)をつくり、鉦太鼓(かねたいこ)を鳴らし、はやしつれて海辺にいたる」という記録がある。わらの疫神はそのまま海へ流された▲町内こぞって「送れ、送れ、どんどと送れ」とはやし立てたこの「風邪の神送り」、やがて感冒流行の際の恒例行事となったが、人々の願いとは逆に感染を広げる結果となったろう。感染症の知識のなかった時代の悲しい過ちである▲落語では流した張りぼての疫神が夜の海の漁網にかかり、「弱み(夜網)につけ込む風邪の神」というオチがつく。感染症が知識の空白や医療体制の手薄さなど、人間の弱点に容赦(ようしゃ)なくつけ込んでくるのは、昔も今も変わりあるまい▲新型コロナの感染の拡大で、各地から医療体制の逼迫(ひっぱく)への不安が伝えられている。この勢いで感染が広がれば不安が現実になるのは避けられない。その場合、緊急に治療が必要な他の致命的な疾患への対応もできなくなる恐れがある▲不思議なのは、人の移動を奨励するGoToトラベルへの政府の見直しの中途半端なことである。菅義偉(すが・よしひで)首相はGoToが感染を広げた証拠はないというが、経路不明の感染が急増するなか、わざわざ人の移動を促進することはない▲旅行・観光業界も今の感染拡大を止めずに先行きは見えない。よかれと思っての施策も、そこにもし過ちがあれば容赦なくつけ込む風邪の神である。今こそ人間の側がこの先のリスクの認識を共有すべきだろう。

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