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みっちん大変・石牟礼道子物語

石牟礼道子さんの伝記です。道子さんのそばにはいつも猫がいました。道子さんの代々の“側近猫”の語りで構成します。

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みっちん大変・石牟礼道子物語

/7 曙光/4 里芋の葉につつむ=米本浩二

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=田鍋公也撮影
=田鍋公也撮影

 <土曜カルチャー>

 ◆曙光(しょこう)

前回までのあらすじ

 みっちんは盲目の祖母おもかさまのお守りをしている。雪の夜、立ちすくむふたりは不穏な気配に包まれる。近所の遊女屋の女性が中学生に刺殺される事件が起きた。畳を染める鮮血。みっちんは自分が刺されたかのような衝撃を受けた。

 だてに漂浪(され)いているわけじゃないからね。たいていのウワサはオレの耳に入る。不仲の松太郎と亀太郎がひそひそ声で話し込むのはよくない兆候だ。古参の石工が「出ていく銭ばかりで、泊まってくれる銭がなか」と朋輩(ほうばい)に話すのを聞いた。吉田組は財政的に苦境にあるらしい。

 昭和初年、石はすべての建造物の基礎であるから、天草伝来の加工技術を駆使する吉田組は引く手あまただった。しかし、惣領(そうりょう)の松太郎が趣味人の本領を発揮して、山の奥深くの道路建設など採算を度外視して請け負うので、まったくもうからない。もうかるどころか虎の子の山々を売り払って赤字を補塡(ほてん)しているありさまなのだ。

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