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小説「恋ふらむ鳥は」

飛鳥時代の歌人・額田王を主人公に、日本の礎が築かれた変革期の時代を描きます。作・澤田瞳子さん、画・村田涼平さん。

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小説「恋ふらむ鳥は」

/163 澤田瞳子 画 村田涼平

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 だが葛城(かつらぎ)と大(おお)海人(あま)は互いに睨(にら)み合ったまま、額田(ぬかた)を一顧だにしない。しばしの沈黙の後、鎌足(かまたり)がようやく、「考えとは」と問うてくれた。

「わたくしが遷都を寿(ことほ)ぐ歌を奉りますので、それを飛鳥じゅうの人々の前で、葛城さまがご嘉納(かのう)いただくというのはいかがですか」

 そのための歌は、すでに数首、詠み溜(た)めている。葛城が額田自身ではなく、その詠む歌を重んじていると認めるのは、腹立たしいが、自分に遷都を促す能力があるとすれば、これしかない。しかしその途端、大海人は鼻白んだ顔で、ふんと鼻を鳴らした。

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