大麻取締法違反で検挙される人が急増している。法務省の犯罪白書によると、昨年は前年比2割増の4570人に上り、過去最多となった。
若者が目立つ。20代が4割を占めて最も多く、20歳未満も1割を超え、前年から大幅に増えた。
今年に入っても、上半期に検挙された若者は昨年の同期間を上回り、状況は悪化している。
興味本位で使い始めることが多い。インターネット上で、大麻に害はないとの誤った情報が流れているのが一因だ。
検挙された人の8割が危険性は全くないか、あまりないと考えていたとの調査がある。
若者が、手に入れやすくなっている現状もある。ネット上のサイトや投稿で、入手方法を知るケースも多いという。
大麻を使うと幻覚を見たり、記憶力や集中力が低下したりする。精神疾患や生殖機能の異常につながるとの報告もある。
「ゲートウエー(入り口)ドラッグ」とも言われる。大麻をきっかけに、より刺激の強い薬物に手を出し、深刻な薬物依存に陥る恐れが懸念されている。
覚醒剤使用者の半数に大麻の経験があり、未成年で使い始めていた人も目立った。
危険性を伝える取り組みを強化しなければならない。中学生や高校生の使用例もあり、学校での教育も大切になる。
海外では、条件付きで大麻を処罰の対象外としているところもあるが、有害性を否定しているわけではない。
薬物対策では、依存しないための治療も重要だ。刑務所や少年院ではプログラムが用意され、出所後の支援も整備されつつある。
ただ、大麻で検挙された人は、起訴猶予となるケースが少なくなく、有罪となっても大半は執行猶予が付く。治療につながりにくい実情がある。
捜査機関や刑事施設、保護観察所、病院、支援団体の連携強化が欠かせない。息の長い治療・支援に向けた体制の構築が必要だ。
福岡県は執行猶予判決を受けた人に、個別の支援計画をつくって病院などを紹介している。こうした例も参考にして、薬物を断つための仕組みを整えてほしい。