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第70期王将戦リーグ特選譜

永瀬王座が初のリーグ入りで挑戦者に 分が悪い後手番で豊島竜王を降す

王将戦リーグのプレーオフで豊島将之竜王(左)に勝ち、感想戦で対局を振り返る永瀬拓矢王座=東京都渋谷区の将棋会館で2020年11月30日午後7時55分、大西岳彦撮影

 9月から続いてきた王将戦リーグが、いよいよプレーオフの日を迎えた。

 11月20日の最終局を迎えるまで5戦全勝で首位を走っていた永瀬拓矢王座は最後に広瀬章人八段に敗れ、5勝1敗になった。一方、1敗同士の豊島将之竜王―羽生善治九段戦に豊島が勝って5勝1敗で並び、この日を迎えた。

 両者のリーグ戦での対戦は11月17日で、全勝同士の対決を永瀬が制して単独首位に立った一局だった。

 20日の対局後、両者は22日に将棋日本シリーズJTプロ公式戦の決勝で対戦し、豊島が勝って優勝。その後永瀬は25日に棋王戦敗者復活戦で久保利明九段に勝ち、挑戦者決定二番勝負進出へあと1勝に迫った。

 豊島は26、27日に鹿児島県指宿市で行われた竜王戦第4局で羽生に勝ち、通算3勝1敗として初防衛にあと1勝に迫っている。

 両者ともに対局をこなす日程でプレーオフを迎えた。振り駒は「歩」が3枚出て、豊島の先手番が決まった。【山村英樹】=▲が先手、△が後手

<第70期王将戦リーグ・プレーオフ>

2020年11月30日

持ち時間各4時間

場所・将棋会館

▲豊島将之竜王

△永瀬拓矢王座

▲2六歩  △8四歩  ▲7六歩  △3二金

▲7八金  △8五歩  ▲7七角  △3四歩

▲6八銀  △4四歩1 ▲2五歩  △3三角

▲4八銀  △4二銀  ▲4六歩  △4三銀1

▲4七銀  △6二銀1 ▲5六銀  △5四歩

▲4八飛3 △5三銀6 ▲6九玉  △7四歩

▲7九玉21 △9四歩1 ▲5九金6 △9五歩1

▲3六歩6 △7三桂  ▲3七桂2 △6四銀1

▲1六歩10 △1四歩2 ▲4九飛1 △6二金1

▲4五歩13 △同 歩  ▲3三角成1△同 桂

▲4五桂  △同 桂  ▲同 銀(第1図)

 永瀬は今年、2回、挑戦者決定戦へ進出した。棋聖戦と王位戦だったが、ともに藤井聡太七段(当時)に敗れ、藤井は両方ともタイトルを獲得して史上最年少2冠に輝いた。

 今年度、3回目の挑戦者決定をかけた対局。元々勝負強いイメージはあるが、藤井への連敗は痛かった。豊島とは今年14局目の対戦と月に1局以上のペースで指している。豊島5勝、永瀬6勝2持将棋とほぼ拮抗(きっこう)しているが、後手番の勝利は叡王戦第4局の1局しかなく、先手番の勝利が目立っている。

 しかも豊島には叡王を奪われ、JT杯も優勝を許して借りがたまっている。

 豊島が飛先の歩を2六で止めて角換わり戦の構えを見せたのに対し、永瀬は角道を止めて雁木の構えに組んだ。豊島は右四間飛車で応戦。4筋から動いた。豊島が2筋の歩を突き越さなかったのに、永瀬が反応したともいえるし、豊島が雁木に誘導したともいえる。

 永瀬は後手番が決まった時の心理を「今期の大一番で後手番が多いので、そうなるのかなと思っていた」と語り、後手番で勝てないと、きつくなるのは当然だが、いつ克服できるかは早いか遅いかなので、課題の後手番で全力を尽くそうという心境だったようだ。

 第1図以下の指し手

△8六歩17 ▲同 歩  △9四桂  ▲9八桂17

△3八角34 ▲4八飛1 △2九角成1▲2一角15

△3九馬17(第2図)

 第1図で昼食休憩に入り、再開後すぐに、永瀬は△8六歩の突き捨てから△9四桂と据えた。9筋の突き越しを生かした作戦で、後手番になった時に用意していたのだろう。局後は「想定はしていなかったが、イメージのある将棋だった」と語っていた。

 ▲9八桂と受け一方の手を指すのはつらいようにも見えるが、おそらく最善。後手は4筋を補強する有効な手が難しく、△3八角から飛に働きかけた。

 ▲2一角は4筋の突破を厳しくする当然視された一手で、局面は険しさを増してきた。ただ、豊島は「あまり自信はなかった」と言い、「△3九馬と指されて、まずいのかもしれない」とも局後すぐに語っていた。対局中もそんな思いがあったのか、第2図で長考に沈んだ。

 第2図以下の指し手

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残り1537文字(全文3140文字)

山村英樹

1981年入社。青森支局を経て1986年から東京学芸部で囲碁将棋などを担当。

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