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地球の肺を守ろう~コンゴ熱帯雨林保護の最前線から(13)感染症予防にも気候変動の抑制が重要=大仲幸作

コンゴ盆地の奥地にカヌーで分け入る。コンゴ盆地は地球上で最も原始性の高い森林が残るエリアの一つである=コンゴ民主共和国環境省提供

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 私が赴任していたコンゴ民主共和国では3月下旬、チセゲティ大統領がコロナ対策のために突如、国境封鎖を命令すると、国際航空便の往来もストップしてしまいました。そんな中、私たち家族は米国政府が手配したチャーター機に何とか席を得て、ワシントン経由で、まだ肌寒さの残る成田空港に降り立ちました。あれからはや7カ月、感染に疑心暗鬼になりながら、三重の実家で自宅待機を行ったことが、遠い昔のことのように感じられます。

 七夕の日、妻や娘が「コンゴに早く戻れますように……」と書いた短冊を笹の枝先につるすのを見て、私はハッとしました。アフリカより安全、便利、ピカピカのご飯や新鮮なお刺身が毎日食べられても、現在の私たち家族の生活基盤は、日本ではなくコンゴにあることを心身共に実感してきた、日本での半年間でした。

 最近は地球の裏側にいるコンゴ環境省の同僚とのオンライン会議に苦労しながら、今回のコロナパンデミックが、私の専門である環境問題と一体どういった接点を持ち、今後どのように影響を及ぼし合うのか、そんなことを日々思い巡らせています。

 そんな中、最近少し気になっていることがあります。「感染症対策で大変な時に環境問題にかまっている余裕はない」。そんな雰囲気が周囲に何となく感じられることです。しかし、そういった考え方は本当に正しいのでしょうか。

 皆さんはご存知でしょうか。今回の新型コロナはもとより、エボラ、SARSなど新しい病原体による感染症は、その約7割が野生動物や家畜などからの伝播(でんぱ)によるものです。そして、1960年以降に流行した感染症の3割以上が、実際に農地の拡大や都市化など、自然環境の改変が実質的な原因となっていると言われています。すなわち、「地球の肺」と呼ばれるコンゴ盆地や南米アマゾンの熱帯雨林の保全は、気候変動の抑制や生物多様性の保全だけではなく、将来的な感染症予防にとっても大変重要な課題であるというわけです。

米国政府が手配したチャーター機。在コンゴ米国大使館は国籍を問わず、子供や女性の搭乗を優先した=2020年3月、大仲幸作さん提供

 そんな中、世界では今回のコロナ禍で、「グリーン・リカバリー」、そして「ネイチャーベースド・ソリューションズ」に対して注目が集まっています。これは直訳すると「緑の復興」、そして「自然に基づく解決策」とでも言うのでしょうか。環境問題に関心の高い欧州諸国はもとより、隣国の中国や韓国、そしてアジアやアフリカの途上国まで、多くの国々が、自然再生、再生可能エネルギーや都市緑化の推進など環境保全を図りながら、また、自然本来が持つさまざまな機能を活用しながら、コロナで急激に落ち込んだ経済を回復しようと、挑戦を始めています。そして、さらには、こうした政策で、社会の構造、そして私たち人間の価値観までトランスフォーメーション(変革)すべきだといった、より野心的な掛け声まで出てきています。

 今回のコロナ禍で、私たち家族も、その生活スタイルがずいぶんと様変わりしました。三密を避け、弁当をもって野山に散策に出かける機会が増えたことで、娘はトレッキングが大のお気に入りになりました。将来を担う子供たちが、自然の素晴らしさや大切さを理解でき、運動不足の解消にもなり、さらにはお財布にも優しい……よくよく考えてみれば、我が家も「ネイチャーベースド・ソリューションズ」によって、わずかですがトランスフォーメーションを実現できたのかもしれない、そう感じています。

 苦しいことばかりに感じるコロナ禍の生活ですが、一個人から国家、そして国際社会まで、それぞれのレベルにおいて、サステナビリティ―(持続性)の意味を見つめ直す、かけがえのない機会を私たちに提供してくれているのかも知れません。皆さん、ポジティブな思考で、この難局を何とか乗り切っていきましょう!(つづく)


大仲幸作(おおなか・こうさく)1999年に農林水産省入省。北海道森林管理局、在ケニア日本大使館、農水省国際経済課、マラウイ共和国環境省、林野庁海外林業協力室などを経て、2018年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザー(JICA専門家)としてコンゴ民主共和国環境省に勤務。

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