劇評 演劇 現代能楽集X「幸福論」 魂の救済の先に光=評・濱田元子

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「隅田川」。(左から)瀬奈じゅん、鷲尾真知子、清水くるみ=細野晋司撮影
「隅田川」。(左から)瀬奈じゅん、鷲尾真知子、清水くるみ=細野晋司撮影

 多くを失い、価値観も揺らいだ。本当の幸福とは何か、それぞれが問い直したコロナ下の社会に、女性演劇人2人が異なる手つきでヒリヒリと迫る。

 能を題材に現代の物語を紡ぐ世田谷パブリックシアターの企画第10弾。瀬戸山美咲が「道成寺」、長田育恵が「隅田川」に挑み、瀬戸山が演出もする。

 山伏を思うあまり蛇体に姿を変えた娘の鐘入りが見せ場となる「道成寺」。だが原曲の「執心」ではなく、親が敷いた幸せのレールに乗せられた子の悲劇に仕立てた瀬戸山の視点が面白い。それぞれ自己実現にまい進する親(明星真由美、高橋和也)の滑稽(こっけい)さが、ゆがみを映す。

 一方の長田は、子を失った母の深い悲しみという「隅田川」のモチーフを、産むことを巡る社会のリアルへと広げ、不妊治療など女性のセンシティブな問題にも静謐(せいひつ)な筆致で切り込む。

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