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<教育編②>「楽に単位取れるから」オンライン授業評価? 可視化された日本の大学の授業の質

自宅で授業の動画を撮影する近畿大の熊谷哲哉准教授=大阪市福島区で2020年10月19日、木葉健二撮影
自宅で授業の動画を撮影する近畿大の熊谷哲哉准教授=大阪市福島区で2020年10月19日、木葉健二撮影

 新型コロナの拡大は、日本の大学も震撼(しんかん)させた。各大学は3~4月に慌ただしくオンライン授業の導入を決め、教員は数週間で対応を迫られた。オンライン授業には、ネットでライブ中継する「同時双方向型」と教員が動画を配信する「オンデマンド型」があるが、日本ではオンデマンド型が主流だ。

 教員側の負担は少なくない。近畿大(東大阪市)の熊谷哲哉准教授(44)は4月以降、自宅書斎に置かれたビデオカメラに向かうのが日課となった。書斎の四方に並ぶ本棚の上段に物干しざおを取り付け、緑色の布をぶら下げた。お手製の「スタジオ」だ。

 「答えはこうなります」「この辺りについては前回、説明したので、思い出してください」。熊谷さんは課題の答えを、手元のタブレット端末に表示された教材にタッチペンで書き込みながら説明していく。

 授業には前回出した課題の確認、教科書の解説、新しい課題の三つを盛り込むため、撮影は計3回。撮影が終わると休む間もなく、撮影した素材に音楽や資料画像を組み合わせ、自らの発言を聞き直して、聞き取りにくい部分などを字幕にする。講義前日までに動画を完成させ、翌日の時間割に合わせて動画サイト「ユーチューブ」に投稿する。

 熊谷さんはこうした動画を1週間に6種類作成しており、撮影が朝から夜に及ぶ場合もある。学生の関心を引きつけるため、著名ユーチューバーの動画を見て研究することも怠らない。最近は動画作成に慣れてきたが、「対面授業に比べて労力は相当かかる」と明かす。大学関係者によると、慣れない教員の場合、1回の動画作成に数時間かかることもあるという。

 だが、教育熱心な教員ばかりではない。オンライン授業の導入は、今まで見えにくかった「教員の質」を可視化した。

 「私が取っていた授業はほとんどがオンライン『課題』でした」。関西学院大(兵庫県西宮市)教育学部4年の江頭翔太朗さん(23)は憤る。授業の時間にパソコンを開いて待っていても、授業が配信されない。ネット上の掲示板を見たら、授業の資料とリポートの課題だけがアップロードされていた。「教員からは何のフォローもない。これじゃあ、通信教育と一緒です」。江頭さんがリポートを提出しても、内容について教員の反応はなかった。単位だけは無事に取得できたが、「学費を払い、単位を買っているみたいだ」と顔をしかめる。

 関西地方の私大2年の女子学生(21)も、大学の対応に不満を持つ一人だ。動画が授業の時間にアップロードされず、教員とも連絡がつかないケースが多い。午前11時10分の授業が午後9時に配信され、その日のうちに授業の感想の提出を求められたこともあった。「もしアルバイトが入っていたら、締め切りを守れなかった」。この学生によると、大学の授業は本来90分だが、授業の動画が30分程度で終わったり、教員が数年前に撮影した動画が配信されたりしたケースもあったという。「教員は最低限のルールも守っていない。他の大学への転学も考えたい」とうんざりした様子で語った。

 江頭さんは8月下旬、前期の学費の一部返金と後期の学費減額を求めたインターネット署名を開始した。学費は、施設利用料を含めて年間約120万円。「施設はほとんど利用していないし、授業の質が学費に見合っていない」と主張する。わずか十数日で学生や保護者、卒業生ら約430人が賛同し、大学側に提出した。

 関西学院大の冨田宏治副学長は10月の記者会見で、教員が講義をせず、資料だけを提示して課題の提出を求める授業が、全体の4割に上ることを明らかにした。冨田副学長は「授業内容は教授に任せられている部分がある。大学としてああしろ、こうしろと強く求めることは難しかった」と釈明、来年度からは課題のみの授業を認めない方針を示した。

 一方で、学費の返還は…

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