甲子園ボウルまであと一つ 亡き友・大介と見せたアメフト桜美林大の快進撃

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
桜美林大アメフト部の2020年度のポスター。19年度に活躍した荒巻大介さんが、躍進の象徴として起用された=桜美林大アメフト部提供
桜美林大アメフト部の2020年度のポスター。19年度に活躍した荒巻大介さんが、躍進の象徴として起用された=桜美林大アメフト部提供

 ベンチには背番号20のユニホームが飾られていた。勝負どころになると、選手たちは駆け寄っては触り、何かをつぶやいてグラウンドに飛び出していく。アメリカンフットボールの「学生日本一」を争う毎日甲子園ボウル出場まで、あと1勝に迫った桜美林大。その場にいるはずだった亡き友と見せた快進撃だった。

名門・日大に一時はリードも

 11月29日、甲子園ボウルの関東代表の座を懸け、東京都調布市で行われた関東大学1部上位リーグ「TOP8」の優勝決定戦。8年前は関東3部と低迷が続いていた桜美林大にとって未知なる戦いだった。相手は関東勢最多34回の甲子園ボウル出場を誇り、「悪質タックル問題」からの復活を期す日大。東の横綱に食い下がり、前半には一時、14―10とリードを奪ったが、最後は地力の差が出て14―38で敗れた。関口順久監督(50)は静かに口にした。「もう一人、核になれるRB(ランニングバック)がいれば少しは違ったかも。例えば荒巻のような……」

 荒巻大介さん。横浜市出身で中学までサッカーをし、神奈川県立舞岡高でアメフトを始めた。父正人さんがラグビーをしていた影響でコンタクトスポーツに興味があったという。約170センチ、約70キロの体を鍛え、走力を武器に県選抜にも名を連ねた。ポジションはラン攻撃の中心のRB。2013年に就任した関口監督の下で急速に力を伸ばしていた桜美林大に18年に入学し、1年生から出番をつかんだ。2年生だった昨季は1部下位リーグ「BIG8」で断トツの738ヤードを稼ぐ。チームは2位となり、入れ替え戦の末に初のTOP8に参戦した。

母の病とコロナへの不安

 順調な学生生活に見えたが今年2月、母直子さん(59)にがんが見つかる。直子さんによると、荒巻さんが中学卒業を控えた15年春、会社員だった父正人さんは仕事中に突然倒れ、55歳で亡くなった。2歳上の姉と2人きょうだいで「俺が一家の大黒柱だから、俺が家族を守らないといけない」…

この記事は有料記事です。

残り1165文字(全文1984文字)

あわせて読みたい

ニュース特集