ベストセラーコミック「うつヌケ」で知られる漫画家の田中圭一さん(58)。作品では自身や著名人らがうつ病から脱出する過程をユーモアを交えて描いた。その後も症状がぶり返す「リターン」を度々経験し、新型コロナウイルス禍の中で落ち込むことも多かったというが「自分を客観視することで落ち込みを抑えられた」と話す。憂鬱な気分をコントロールするコツを聞いた。【野村房代/統合デジタル取材センター】
――「うつヌケ」では、10年近くかかってうつから「脱出」した経験を紹介しています。うつになったきっかけは何だったのですか。
◆初めて心療内科を受診したのは2005年でした。おそらくきっかけはその5年前。畑違いの仕事に転職して、入社早々に大きな成果を出すことができたんです。そのことで、本来不向きな無理のある仕事だったのに、さらに高い目標を自分に課してしまった。
でも向いていないから、おのずと営業成績は下降線をたどり、周囲の風当たりもきつくなりました。それで自分は何もできないお荷物だ、と自己嫌悪に陥ったことが、うつになる要因だったと思います。
ただ、ここから「うつトンネル」に入ったんだ、と自分で明確にわかるわけではないんですよ。道を歩いていたらだんだん暗くなって、気づいたら真夜中になっていた感じです。
当時はうつなんて根暗な人がなるものだ、自分は絶対かかるはずがない、という思い込みがあったから、認めるのに時間がかかりました。でも自分はもうだめだと思うまで落ち込み、病気以外に原因はないだろうと観念して、医者に救いを求めたわけです。
――一番つらかったのはいつごろですか。
◆08~10年ごろです。…
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2002年入社。岡山支局、東京・生活報道部などを経て20年春から統合デジタル取材センター。ファッション、アート、カルチャーについて主に取材。また、障害や差別など光が当たりづらいマイノリティーの問題に関心がある。1児の母。共著に「SNS暴力 なぜ人は匿名の暴力をふるうのか」(毎日新聞出版、2020年9月発売)
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