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「菅語」を考える

質問に正面から答えず、同じフレーズを繰り返し、議論を拒む。菅義偉首相の言葉の本質や、問題点を考えます。

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国語学者・金田一秀穂さんが読む首相の「姑息な言葉」 すり替えと浅薄、政策にも

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国語学者の金田一秀穂さん=2019年8月4日、北田研索さん撮影
国語学者の金田一秀穂さん=2019年8月4日、北田研索さん撮影

 「総合的・俯瞰(ふかん)的」「多様性」「バランス」「既得権益」……。日本学術会議の任命拒否問題を巡っては、菅義偉首相が抽象的なフレーズを繰り返す場面が目立つ。具体性を著しく欠いた国のトップの説明は、日本語の専門家にはどう映っているのだろうか。国語学者の金田一秀穂さんは「本来的な意味での『姑息』(こそく)」と指摘し、政権が打ち出す政策にも相通ずるものがあるとみる。【金志尚/統合デジタル取材センター】

「何も考えていないんだろうな、この人は」

 ――菅さんは抽象的な言葉が多い印象です。どう見ていますか。

 ◆あまり考えた発言とは思えないですね。その場その場をしのげればいいと思っているんでしょう。(学術会議について)「女性が少ない」とか「私立大所属が少ない」「既得権益」とか、思いついたことをとりあえず言っている感じですね。これらは中身を伴わない、何の意味もない言葉です。「何も考えていないんだろうな、この人は」と思いますね。ポリシーがあって言っているわけではないことが分かってしまう。

 つまりは姑息なんです。姑息は「ひきょう」という元々なかった意味で使われることが多いですが、本来の意味は「その場限り」。菅さんはその場限りの答弁を繰り返して当座をしのぎ、いずれ国民が飽きて聞く気がなくなるのを待っているんでしょう。

 ――その場限りの答弁でその場を収め、ほとぼりが冷めるのを待つわけですね。

 ◆米国など民主主義的な国は普通、「政治は言葉」だと思っています。それこそ(米副大統領に就く予定の)ハリスさんの演説を聞くと、「政治家ってこういうものだよなあ」と思います。でも…

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