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ホーム転落事故 後絶たぬ原因の分析必要

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 またも痛ましいホーム転落事故が起きた。視覚に障害のある60代の男性が東京メトロ東西線の東陽町駅で線路に転落し、電車にはねられて亡くなった。

 ホームドア工事は終わっていたが、来年2月の稼働に向けた調整のためにドアは開いたままだった。駅員は、改札を通る男性が持つ白杖(はくじょう)が見えなかったという。

 駅には工事中であることを知らせる張り紙はあったが、視覚障害者に知らせる対応は取られていなかった。

 事故の翌日、東京メトロは、設置工事を音声で知らせる装置を取り付けた。改札での見守り要員を増員し、ホームドアの稼働も2週間以上前倒しする。東京メトロの全180駅中でホームドアがあるのは143駅で、2025年度末までの全駅設置を目指している。

 大阪メトロも、25年度までに全133駅へのホームドア設置を予定している。東京と同様の音声装置はすでにあるが、今回の事故を受け、自動音声による構内放送もすることにした。

 昨年度に起きた駅ホームからの転落事故は2888件で、このうち視覚障害者は61件に上る。今年に入って4人の視覚障害者が命を落とした。

 全国の約9500駅のうち、ホームドアがあるのは、今年3月時点で858駅で1割に満たない。

 政府は、ホームドアの整備を加速させていく方針だ。しかし、ホームドア設置工事にあたっての配慮を示したガイドラインはない。

 国土交通省は、ホームドアに加え、新技術を活用した転落防止対策の検討会を始めている。無人駅を安全で快適に利用するための指針作りに向けた意見交換も行っている。無人駅では、一層の安全対策とスムーズなサポート体制が必要だ。

 転落事故の原因を解明し、総合的に分析して対策にいかす仕組みはまだない。転落事例をデータベース化している大学の研究成果や、白杖による視覚障害者の一人歩きに詳しい専門家の助言を基にした原因分析は欠かせない。

 コロナ禍で人出が減り、接触へのためらいもあり、乗客などの声かけが少なくなったという視覚障害者もいる。あらゆる手段を尽くして安全な駅を実現してほしい。

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