はやぶさ2の「玉手箱」で何が分かる? 宇宙大国アメリカをしのぎ「お家芸」に
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小惑星リュウグウの岩石が入っているとみられているカプセルが、探査機「はやぶさ2」によって地球に届けられた。科学的に非常に貴重な試料(サンプル)が含まれていると期待されることから「玉手箱」とも称される。中身を開けると何が分かるのか。【池田知広、永山悦子、信田真由美】
「『西遊記』はありがたいお経をもらいに行く話だが、みんな道中を楽しんでいて、誰もお経に興味がない。でも本当の目的は経文で、それが面白いんです」。旅路に注目が集まりがちな「はやぶさ2」。リュウグウの試料分析を統括する橘省吾・東京大教授は中国の冒険小説に例え、科学的な成果に注目してほしいと訴える。
カプセル内の貴重な試料は0・1グラムから1グラム程度と予想されている。まずは6チームで分析し。海外の研究機関や米航空宇宙局(NASA)にも一部を分配する。40%分は、将来の分析技術の向上を見越して保管する。
試料分析で解明を目指すのは主に、「太陽系の起源」と「地球の海や生命の材料」の二つだ。小惑星は地球のようにドロドロと溶けて高温になった過去がなく、46億年前の太陽系誕生当時の情報を失わずにとどめているとされる。そのため小惑星は「太陽系の化石」と呼ばれる。
リュウグウは、有機物や水を含むとみられる「C型」の非常に黒い小惑星だ。「C」は炭素(元素記号C)を表す。初代「はやぶさ」が微粒子を持ち帰った岩石質の「S型」の小惑星イトカワとは異なり、試料を調べれば地球の水や、生命を構成する有機物との関係を明らかにできると考えられている。
有機物の主な構成元素は炭素で、試料からはさまざまな種類の有機物の発見が期待される。リュウグウの試料で水に溶けない「固体有機物」の分析を担当する薮田ひかる・広島大教授は「生命を形作った材料は何で、どこからもたらされたのか。そのシナリオを解明できる、あるいは選択肢を絞れると思う」と予想する。
薮田教授は、初期の地球に小惑星などの小天体が衝突し、生命の原材料を提供したとみている。「固体有機物はただの黒い『炭』のように見えるが、エネルギーを与えるといろんな分子を生み出す『分子の貯蔵庫』だ。小惑星から地球にもたらされ、海底の熱水などで変化して、生命の起源に関わった可能性も十分にある」という。薮田教授によると、固体有機物から細胞膜を構成する脂質に似た分子が生じることも報告されている。他にも、リュウグウの試料…
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