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学術会議任命拒否

日本学術会議が推薦した新会員候補6人を菅首相が任命しなかった。極めて異例の事態の背景や問題点を追います。

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学術会議のあり方論議 すり替えだけ進んでいる

 日本学術会議のあり方を議論している自民党のプロジェクトチームが、3年後をめどに政府から独立させるよう求める提言をまとめた。政府内でも、非政府組織への移行が検討されている。

 見直し論議は、菅義偉首相が新会員候補6人を任命しなかったことが表面化した直後に提起された。任命拒否への批判をかわし、組織のあり方の問題にすり替える意図が明白だ。

 学術会議は拒否の理由を明らかにするよう求めている。だが首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的観点からの判断」との説明を繰り返すばかりだ。

 プロジェクトチームは、会員がより自由な立場で活動するには、欧米のアカデミーのような非政府組織が望ましいと判断しているという。だが、日本と欧米とでは学術をめぐる歴史が異なる。

 日本は明治維新を機に欧州から近代科学を導入した。国家主導で大学を作り、学問体系を構築した。学術会議もこうした歴史を踏まえ、政府の特別機関として発足した。同時に、政府から独立して活動することが法律に明記された。

 今回の見直しは、このような事情を無視している。形だけをまねて非政府組織にしても、機能するとは限らない。

 政権内には、学術会議が2017年にまとめた軍事研究に関する声明への批判がある。声明は、防衛装備庁が新設した安全保障に関わる研究への助成制度を「政府の介入が著しい」と指摘した。

 これを受け、制度に応募しないとの決定をする大学が相次いだ。政府が、その方針に従わない学術会議に対し、任命権を振りかざして統制を強めようとするなら筋違いだ。

 国際的な信用にもかかわる。学術会議が加盟する国際学術会議の会長は公開書簡で、学問の自由に与える影響を「極めて深刻」と批判した。学術に関わる決定が政治的な統制や圧力の対象になってはいけない、とも指摘している。

 学術会議は新体制が始動したが、人文・社会科学系の第1部は、6人が任命を拒否されたことで約1割が空席のままだ。

 科学技術大国の地位を、政府自ら損ねている。首相にはまず、任命拒否した理由を説明する責任がある。

【学術会議任命拒否】

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