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青ちゃんらしい「世界一やさしい壁ドン」を目指した ドラマ「#リモラブ」出演の松下洸平さんインタビュー

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「#リモラブ」に出演中の俳優、松下洸平さん=東京都港区で2020年11月20日、梅村直承撮影
「#リモラブ」に出演中の俳優、松下洸平さん=東京都港区で2020年11月20日、梅村直承撮影

 NHK連続テレビ小説「スカーレット」(2019年度後期)で一躍注目された俳優の松下洸平さん(33)。ヒロイン喜美子(戸田恵梨香さん)の夫、八郎役で見せた繊細な演技は女性を中心に多くの視聴者の心をつかみ、「八郎沼」にはまったという人を多く生み出した。現在、放送中の日本テレビ系連続ドラマ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」(水曜午後10時)で、再び恋愛ドラマに挑戦している。演技経験は豊富な松下さんだが、恋愛ものは慣れないようで……。【佐々本浩材】

ラブコメは新鮮

 「#リモラブ」は、仕事に熱心なあまり、ほとんど恋らしきものをしたことがない28歳の産業医、大桜美々(波瑠さん)が主人公。コロナ禍による自粛生活中に先輩から勧められやってみたオンラインゲームでたまたま会話した人物と、その後もネット交流サービス(SNS)でやりとりするようになる。

 SNSで「草モチ」と名乗った美々は、その相手「檸檬(れもん)」のことが次第に気になり始める。どうやら同じ社内の人間らしきことが分かり、職権を使ってその正体を探ろうとする場面も。松下さんが演じるのは「檸檬」こと、人事部社員の青林風一(ふういち)。SNSでは心が通じ合っているのに、顔を合わせるとギクシャクしてしまう2人の恋を描くラブコメディーだ。

 「ラブコメはほぼ初めてですね。現場の空気、共演者の皆さんとのやり取りも含め、すごく新鮮です。物語を深く追究し、役柄を深めていく作業はもちろん『#リモラブ』でもやっていますが、それ以上に大切なのはいかに(視聴者に)楽しんでもらえるか、いかに胸をときめかせていただけるか。そういうところにスポットを当てているお芝居がどういうものなのかって考えるのは、僕にとってはすごく新鮮で、勉強中って感じですね」

素朴で優しい青ちゃんは岩手県出身

 青林は松下さんの年齢と同じ33歳の独身。公式サイトによると「田舎育ちで素朴で優しく、人を思う気持ちをちゃんと持っている。が、しばしば持ちすぎて、受け止めすぎてにっちもさっちもいかなくなる」タイプらしい。松下さんは、スタッフと相談しながら、そんな青林の詳細な人物設定を詰めていき、役作りを進めていった。たとえば、出身地は岩手で、というように。

 「衣装合わせをさせていただいた時に、青林の出身をどこにするかって話になりまして、監督やプロデューサーとなんか東北の方だよねってことに。なんとなく台本のイメージから、みんなで決めたという感じですね」

全員が気付くかどうかは分からないけれど

 第4話(11月4日)では、青林の父、菊太郎(山崎一さん)が岩手から上京、2人でホテルに泊まるシーンがあった。青林の設定が芝居に生かされた場面だ。

 「僕は一さんとは20代の前半に一度、舞台でご一緒しているんです。時を経て、今こうしてまた親子役で共演できたこともそうですが、何よりも一さんが現場に来て、お芝居をする前に青ちゃんの歩き方をまねてくださったのが、すごくうれしかったんですね。現場で生まれるものを僕は大切にしたいので」

 本番前、前室(スタジオの手前にある待機スペース)で待っていた時のこと。「(ドラマの中で青林として)普段どうやって歩いてる?」と山崎さんから突然尋ねられ、「僕はこういうふうに歩いてます。ちょっと猫背気味でてこてこ、てこてこ歩くようなのを今ずっとやってるんです」と答えた。「ちょっと教えて」という山崎さんに歩き方もやって見せたという。

 「青林は若くして母親を亡くしているという設定。父と二人三脚で生きてきたというところを、歩き方を見せることで伝えられることがあるんじゃないかと、一さんが提案してくださった。全員が気付くかどうかは分からないけれども、台本に書かれていない出身や、父と子のつながりみたいなものを細かく決めていくことは、それでお芝居がうまくなるわけではないんですけれども、お芝居にとても豊かさが加わります。そういう積み重ねがとても大切なんだなってことを、改めて一さんとご一緒して思いました。すごく勉強になりました」

 さらに、11年の東日本大震災を青林は体験しているという裏設定まで頭に思い浮かべ、青林を演じているという。

 「これから先、どんなふうに、それが生かされるかどうか分からないんですけれども、僕としてはそういった経験をしたっていうところも、もしかしたらいつか役に立つのかなと思って心の片隅には置いてあります」

青ちゃんの頑固さを大切に

 第6話(11月18日放送)で、「檸檬」が青林だと知った美々は、自分が「草モチ」だとついに青林に告白する。だが、生真面目な青林は受け止めきれず、「僕の心の中に草モチさんがいます。でもそれは美々先生じゃないんですよね」と拒絶してしまう。そんな青林の「頑固さ」を大切に演じているという。

 「水橋(文美江)さんの脚本は決していい人をいい人のままで終わらせないというところにすごく面白みを感じてるんですね。必ずいい面と悪い面、両方お書きになってくださる。そこがやってて面白いです」

 「第6話のシーンで草モチが私だったんですと告白をされて、青林は受け止めきれなくてごめんなさいと断るシーン。そこを演じている時に結構きついこと言うんですよね、青ちゃんが美々先生に対して。彼は優しいですし、人を思いやる気持ちは、もちろん人一倍あると思うんですけど、それゆえに『美々先生のことは分からない。草モチさんのことは知っているけど、それが美々先生とイコールで、僕はくっつかないから時間が欲しい。ごめんなさい』と。相手を傷つけてもいいから、本当のことを言わなきゃいけないっていう、よく言えば誠実なんだけれども、そこまで言わなくてもいいのになっていう彼の頑固さ、自分の信念を曲げないところ。この両面を僕は彼を演じている時にすごく意識します。中途半端ではいけないと。ただでさえ個性豊かなキャラクターがたくさんドラマに出てくる中で、青林というキャラクターをどう際立たせるかって思った時に、そこのちょっと頑固すぎる部分は意識して演じています」

「嫌われてもいいんだよ」

 第6話で美々を拒絶してしまう場面では、櫨山裕子(はぜやま・ひろこ)プロデューサーに「嫌われてもいいんだよ」とアドバイスされたという。

 「僕は2人がロビーで話すシーンで、少し中途半端な表現をしてしまったんです。その時にプロデューサーの櫨山さんに『いいの、嫌われても。それぐらい芯のある男でいてほしい』って言われたんですね。はっとしましたね。確かにそうだ。いい人、いい人だけでは性格として丸くなっていく一方で、人間としての引っ掛かりがなくなってしまう。トゲトゲしい部分やゴツゴツした部分がある方が持ちやすかったりするじゃないですか。そういった部分を作る上でも櫨山さんの言葉、すごくはっとしましたね」

青ちゃんらしい「世界一やさしい壁ドン」に

 第6話終盤の「壁ドン」の場面も、女性スタッフらの意見を聞きながら作り上げた。

 青林を食事に誘った美々は別れ際、「あなたの命より大事なものになりたい 。好きです。栗きんとんでも、草モチでもなく私と、私とお付き合いしてください。お願いします」と意を決して告白。だが、青林は「僕は好きになったら、めちゃくちゃ大事にしたいし。ずっと一緒にいたいし、ずっ…

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