「1クラス30人」コロナ追い風、文科省攻勢 新年度予算巡り財務省と「冬の陣」

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霞が関の官庁街に建つ財務省(手前右)と文部科学省(左奥)。少人数学級の必要性を巡り、何度も応酬を繰り広げてきた=大久保昂撮影
霞が関の官庁街に建つ財務省(手前右)と文部科学省(左奥)。少人数学級の必要性を巡り、何度も応酬を繰り広げてきた=大久保昂撮影

 小中学校の教員数を増やす必要があるか否か――。近年、予算編成を巡り文部科学省と財務省がさや当てを繰り返しているが、今年は激しさを増している。文科省が、学級規模の上限を定めた義務標準法を改正し、現行の40人(小1は35人)から30人へ引き下げる一律の少人数学級化を目指す強気の姿勢を見せているからだ。なぜ今なのか背景を探った。【大久保昂】

萩生田文科相「財布を持っている方に負けない」

 「財布を持っている方が強いっていうのは世の中的にはそうかもしれませんけど、それに負けないために文科大臣になったつもりでおりますんで、しっかり戦ってまいりたい」。10月27日の閣議後記者会見。少人数学級の実現の可能性を聞かれた萩生田光一文科相は語気を強め、財務省への対抗意識をむき出しにした。

 発端は前日に開かれた財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の作業部会だった。財務省が教職員数に関する資料を示し、義務教育の現場には既に十分な人数が配置されているはずだと問題提起したのだ。

 義務標準法改正で学級編成基準が40人から30人に引き下げられれば学級数が増えるため、その分教員数が増えることになる。一律引き下げが実現すれば45人から40人への引き下げ以来約40年ぶりの大改革だが、それに難色を示す財務省の主張はこうだ。

 「平成以降、児童生徒数の減少ほど教職員定数は減少していない」。教職員定数は、同法に基づき学級数に応じて自動的に決まる「基礎定数」と、諸課題への対応のため上積みする「加配定数」の合計。公立小中学校(特別支援学校の小中学部含む)の児童生徒40人当たりの教職員定数は平成が始まった1989年度は2・0人だったが、2019年度は2・9人に増えた。

 また「日本は諸外国に比べ学級規模が大きいとの指摘があるが、学級担任を持たない教員が多く、教員1人当たりの児童生徒数は主要先進国並み」と指摘する。公立校における教員1人当たりの児童生徒数は小学校16・2人、中学校13・0人で、米英独仏を加えた5カ国平均(小学校17・1人、中学校14・3人)と変わらない水準にある。

 さらに、学級規模が学力に与える影響について「規模の縮小の効果はないか、小さいことを示す研究が多い」とも主張し、少人数学級の導入論をけん制した。

 これに対し、文科省はすかさず、萩生田氏が反論会見をしたその日のうちにホームページに具体的なデータを示して財務省に異を唱えた。

 まず、「教職員定数が減少していない」との財務省の主張に対しては、「特別支援学校や、小中学校内に置く特別支援学級に通う子どもの増加による側面が大きい」と説明する。公立の特別支援学校の小中学部に通う児童生徒数は、直近の19年度は7万2925人と89年度に比べ34%増。公立小中学校の特別支援学級に所属する子どもの増加はさらに顕著で、19年度(27万6219人)は89年度(8万455人)の3・4倍に膨らんだ。

 手厚い指導が必要なため特別支援学校は小中学部の1学級当たりの上限は6人、特別支援学級は8人と定められている。普通学級より規模がはるかに小さく、その分多くの教員が必要となる。それが児童生徒数ほど教職員定数が減らなかった要因である――というのが文科省の言い分だ。

 05年度までは「教職員定数改善計画」が策定され、財務省も了解の上で教職員の増員を進めてきただけに、財務省が「平成以降減少していない」と主張していることにも「違和感がある」(文科省財務課)。文科省によると、特別支援学校・学級を除いた場合、児童生徒40人当たりの教職員定数は、定数改善計画がなくなった06年度が2・41人だったのに対し、19年度は2・47人と大きな改善が見られない。

 さらに、「担任を持たない教員が多い」との財務省の指摘についても、担任外教員は、通級指導を受ける障害を持った子どもや日本語指導が必要な外国にルーツのある子どもへの対応、小学校の「図工」や「音楽」などの専科指導に充てられており、「引き続きこうしたニーズに対応する教職員が必要」と強調している。

公明提案、「骨太」にも記載 あとは折衝力

 文科省と財務省は近年、予算編成の過程で毎年、こうしたつばぜり合いを繰り返してきた。教職員定数の削減を求める財務省に対し、文科省が守勢に回ることが多く、2015年度予算編成時には、財務省が「35人学級に効果があったとは認められない」と小1を40人学級に戻すことを提案し、文科省が猛反発するなどして食い止めた。

 来年度の予算編成で文科省が「30人」学級化を求める強気の背景には、教員の多忙解消が…

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