- Twitter
- Facebook
- はてなブックマーク
- メール
- リンク
- 印刷

人工知能(AI)が人間を超えられないと言われてきた芸術の領域で、新たな試みが生まれている。来春、AIが作った原作を基にした短編映画が日本で初めて公開される。テクノロジーは創作活動にどんな影響を与えるのか。最新の実態を取材すると、芸術家とAIの新たな関係が見えてきた。
「とまと」という短編映画の脚本がある。「不登校の少年が、トマト栽培をきっかけに立ち直り、再び登校できるようになる」という、ありふれたストーリーだ。この脚本が普通と違うのは、AIが紡ぎ出した物語ということ。8月に映画化が決まった。新型コロナウイルスの感染拡大で撮影スケジュールは遅れているが、「日本初のAI映画」として、来年3月の映画祭での公開に向け準備が進んでいる。
AIを作ったのは「Ales」(アレス、北海道函館市)というベンチャー企業。エンターテインメント業界にいた社長の藤井竜太郎さんが、元人工知能学会会長の松原仁はこだて未来大教授(現在は東大教授)とともに2018年に創業した。藤井さんは「たくさんの物語のアイデアをAIが作ることができれば、さまざまなコンテンツ産業に応用できる」と語る。
AIはゼロから物語を作れるわけではない。まず人間が作った脚本を基本的な物語の構造としてAIに入力して覚えさせる。AIは言葉の持つ意味や観客に与える感情を数値化して分類。80文字程度の文章をあらすじとして入力すると、AIが起承転結の構成をもったオリジナルの物語を作り出す。
新たな創造の可能性を感じたのが、…
この記事は有料記事です。
残り2664文字(全文3301文字)