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東京へ ともに歩む

毎日新聞

男子200メートル背泳ぎ決勝を制し笑顔の入江陵介=東京アクアティクスセンターで2020年12月6日、宮間俊樹撮影

Passion

「グッとくる若手」の台頭待ち望む 競泳背泳ぎ第一人者・入江陵介の思い

 第一人者は若手の台頭を心から待ち望んでいる。競泳男子背泳ぎで五輪3大会出場の入江陵介(30)=イトマン東進。16歳で日本代表入りし世界と渡り合ってきたが、国内では長くライバル不在の状況が続く。「グッとくるような高校、大学生が出てこない限りはダメだと思います」。日本男子背泳ぎの厳しい現状が背景にある。

 額に乗せたペットボトルを落とさず泳ぐ。その美しいフォームは今も健在だ。東京オリンピック会場となる東京アクアティクスセンターで開催された日本選手権(12月3~6日)。最終日の200メートル背泳ぎを制し、危なげなく100メートルとの2冠を達成したレース後、「200メートルは来年で一区切りにしようと考えています」と胸の内を明かした。

 2012年ロンドン五輪で銀メダルを獲得し得意としてきた種目だが、年齢を重ねるにつれ、体力面での難しさを感じているという。東京五輪後は100メートルに絞ることも視野に入れる。

 「残された時間は長くない」。そう考えるからこそ、国内の男子背泳ぎに危機感を募らせる。今回の日本選手権で100メートルは7年連続9回目、200メートルは3年連続13回目。その優勝回数は裏を返せば、ライバル不在の証しだ。入江は「厳しい目を持って(後輩を)応援していきたい」と言う。

世界選手権男子100メートル背泳ぎ決勝で6位に終わった入江陵介=韓国・光州で2019年7月23日、宮武祐希撮影

 頂点を狙った16年リオデジャネイロ五輪でメダルを逃した入江。競争相手を求め、翌年から拠点を競泳大国の米国に移した。練習からトップスイマーと一緒になり、「みんな常にポジティブで、多くのことを学ぶことができました」。

 環境を変え、泳ぎを見直してきたものの、世界との距離は思うように縮まっていない。五輪前哨戦となった19年7月の世界選手権。入江は100メートル、200メートルとも決勝に残ったが、世界の高速化に太刀打ちできなかった。一方、日本男子は、自由形、バタフライ、平泳ぎ、個人メドレーの計5種目でメダルを獲得し、背泳ぎだけが個人の表彰台を逃す結果となった。

 世界選手権後は五輪を見据え、日本に拠点を戻した。再び世界の表彰台を目指し、自らの課題と向き合う。真摯(しんし)に練習に打ち込み、若手にもアドバイスを送る姿を、石松正考コーチは「選手のかがみ」と表現する。

 招致活動にも関わった東京五輪には人一倍強い思いがある。「すべてが未熟で、まだまだ世界の相手にはなっていません。僕ももっと頑張りたい」。将来の日本競泳界を担う若手に刺激を与えるためにも、精進の日々を送る。【村上正】

村上正

毎日新聞東京本社運動部。1984年、神戸市生まれ。2007年入社。舞鶴支局、神戸支局を経て、大阪本社社会部では大阪府警を担当。17年4月から現職。競技は水泳やサーフィンを担当。東京パラリンピックでは取材班キャップ。16年リオデジャネイロ五輪を取材した感動から、長女に「リオ」と命名した。