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免田栄さん死去 冤罪生む土壌変わったか

 死刑囚として初めて再審で無罪となった免田栄さんが死去した。95歳だった。司法も誤ることを身をもって示し、釈放後は冤罪(えんざい)の防止と死刑廃止を訴え続けた。

 1948年に熊本県で起きた強盗殺人事件で、23歳の時に逮捕された。取り調べでは、板張りの床に正座させられ、肩を踏みつけられて、自白を迫られたという。

 耐えきれず虚偽の「自白」をしたことが決め手になり、死刑が確定した。最高裁まで争ったが、無実の訴えは聞き入れられなかった。

 6回目の再審請求が認められ、83年に無罪が確定した。アリバイがあったと認定され、強引でずさんな捜査が明らかになった。

 免田さんは34年半にわたって身柄を拘束され、刑執行の恐怖におびえる日々を送った。社会に出た後も中傷は続いた。そのむごさを忘れてはならない。

 再審請求の記録や獄中でやり取りした手紙などを、免田さんは熊本大に寄贈している。冤罪を戒める資料として活用してほしい。

 免田さんのほか、80年代には財田川事件、松山事件、島田事件と死刑囚の再審無罪が相次いだ。

 しかし、その後も冤罪は無くならない。昨年は熊本県で男性が刺殺された松橋(まつばせ)事件、今年も滋賀県の病院で入院患者が死亡した事件で、再審無罪判決が出た。

 いずれも「自白」が重要な証拠とされて有罪となっていた。自白偏重の捜査の弊害が、またも浮き彫りになっている。

 重大事件では昨年から、取り調べの録音・録画が義務化された。ただ、自白しないと身柄拘束が続く「人質司法」への批判は根強い。録音・録画の拡大や弁護人の立ち会いを議論する必要がある。

 冤罪を生んだ原因の検証も不十分だ。警察や検察が問題点を調べて公表したのは、足利事件など一部にとどまる。裁判所は誤判の究明に否定的だ。海外のように検証機関の創設を検討すべきだろう。

 再審制度の改善も欠かせない。検察側は証拠の開示に消極的で、裁判官の判断次第になっている。開示を促す制度が必要だ。

 無実の人を罰すれば、真犯人を取り逃がし、事件の真相解明を妨げることにもなる。冤罪を生まない仕組みを絶えず考えていかなければならない。

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