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75歳以上の医療費 「選挙にらみ」が目に余る

 75歳以上の医療費の窓口負担引き上げについて、対象者を単身世帯で年収200万円以上とすることで自民、公明両党首が合意した。対象者は約370万人になる。

 現在は原則1割負担になっている。政府は昨年末、一定以上の年収がある人は負担を2割に上げることを決めていたが、年収基準の決定が残されていた。

 ここに至るまで、自民、公明両党の調整は難航した。菅義偉首相が議長を務める政府の検討会議が、2度にわたり延期されるという異例の迷走ぶりだ。

 厚生労働省は11月、単身世帯で年収が「240万円以上」から「155万円以上」までの5案を示していた。

 公明党は最も影響が少ない240万円以上を主張してきた。首相は170万円以上にしたい考えだったという。それぞれ約200万人と約520万人が該当する。

 公明党は当初、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に年内の基準決定を先送りすることさえ求めていた。

 議論に影響を及ぼしてきたのは、来年実施される衆院選と東京都議選だ。選挙戦を考え、負担増はなるべく抑えたいという思惑が働いたのだろう。

 2022年4月と目されていた引き上げ時期も、夏の参院選を考慮して同年10月以降に先延ばしするとみられている。

 だが、少子高齢化が進む中で、医療保険財政をどう持続させるかは避けて通れない課題だ。

 75歳以上の医療給付費のうち9割は、現役世代や国などの支出で賄われている。22年には団塊の世代(1947~49年生まれ)が75歳以上になり始め、医療費がさらに増えると見込まれる。高齢者も応分の負担をせざるを得ない。

 そもそも、引き上げ自体は1年前に決まっていた。議論が難航したのは、真摯(しんし)にこの課題に向き合ってこなかったからではないか。

 確かに高齢者は主な収入が年金で、負担増の影響に配慮する必要はある。資産の状況や家族からの支援によっても状況は違うだろう。ただ、自公の協議からは踏み込んだ具体論が聞かれなかった。

 負担増と正面から向き合い、国民に理解を求めることこそ政治に課せられた責任である。

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