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今週の気持ち

今週の気持ちは「残された意味」

 「女・男の気持ち」(2020年12月3~9日、東京・大阪・西部3本社版計21本)から選んだ「今週の気持ち」は、大阪本社版12月6日掲載の投稿です。

  ◆  ◆

残された意味 京都市西京区・安井淳美さん(主婦・75歳)

 秋の日は暮れるのが早い。前栽(せんざい)の刈り込みを終え、追われるように枝の後始末をする。寄る年波には勝てず、動作が鈍くなって思うようにはかどらない。

 薄暗くなりかけた頃、軽トラックに積んで田へ捨てに行った。大丈夫だと思って田の中に突っ込んだら、ぬかるんでいて、エンジンを吹かしても動かなくなってしまった。

 「ろくでもないことばっかりして。去年も同じような目に遭って注意したやろ」。娘にさんざん怒鳴られた。売り言葉に買い言葉。「そんなら自分でしてくれたらええのに」と言い返してしまった。

 早く帰ってきた娘婿がトラクターで引き揚げてくれた。何にも言わないけれど、かえって気が重い。寝たきりにならないようにと、できることは精いっぱいしているつもりだ。何もそこまで言わなくてもいいのにという腹立たしさ、やれやれという安堵(あんど)感、自分のバカさ加減。いろんな思いがどっと押し寄せてきて、涙が止まらなかった。

 いつまでも続くものと思っていた日々の営み。それなのに、夫はあっという間に逝ってしまった。愚痴の言える相手のいない寂しさ。今どき、同居して農作業をしてくれるのはこの上もなくありがたく、申し訳ないと思っているのだが……。

 娘夫婦に迷惑をかけないように自重し、私が残された意味を問いながら生きていこうと自分に言い聞かせている。

  ◆  ◆

<担当記者より>

 安井さんに電話をすると、開口一番、「田んぼで動けなくなって。書かずにはおれなかったんです」。そして「娘とはすぐに仲直りするんですが」と続けられました。老境に入っておられる多くの方が共感されるのではないでしょうか。

 まだまだ若いつもりの私も、還暦まで2年を切った今、何やかやと“粗相”をしでかすことが増えました。やらなくてはいけないことをど忘れすることなど日常茶飯事。それもほんの数分前まで覚えていたのに……。ほとほと情けなくなります。

 安井さんは最後に「娘夫婦に迷惑をかけないように自重し」と書かれています。その心がけは見習うべきでしょうが、自重しすぎてはつまらないし、娘さん夫婦も決して望まれていないと思います。老いた親を思い、そして、そう遠くない自分の姿も思い描きながら安井さんの投稿を読みました。

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