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あしたに、ちゃれんじ

関西各地で芽生えている市民の新しい活動を紹介します。

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豊かな海、世界にPRを 大阪の魚イメージアップ目指す 畑中啓吾さん=中川悠 /大阪

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大阪市此花区の船着き場に立つ市漁業協同組合の畑中啓吾さん。奥は此花大橋で、オフィスビルなども望める 拡大
大阪市此花区の船着き場に立つ市漁業協同組合の畑中啓吾さん。奥は此花大橋で、オフィスビルなども望める

 「淀川の天然ウナギって、こんなにおいしかったの?」「汚いと思いこんでいた淀川の水が、こんなに澄んでいるなんて」。そんな声を聞くたびに、こっそりとガッツポーズをしている男がいる。

 大阪市漁業協同組合の畑中啓吾さん(42)は、大阪市で漁獲された魚介類のイメージアップを目指す仕掛け人だ。彼が地域を巻き込んで8年前から取り組む「淀川うなぎ」のブランド化。地産地消の商品として取り扱う店も増え、じわじわと知名度が高まってきた。北新地やミナミのかっぽうにも持ち込み、職人の「大阪の魚は使ってはいけない」という思い込みを払拭。「皮がパリッ、中身がふわっとして焼き上がりがいい」と好評だ。

 漁協が2014年に行ったアンケートでは、大阪の海について41%が「昔よりきれいになった」と答えたものの、「どちらかといえば悪いイメージ」と答えた人が56%と半数を超えていた。畑中さんは「昔は海が臭くて魚を食べられへんというイメージがあった」と振り返る。「でも実は、今は水がとてもきれいなんです」。大阪湾と淀川という海水と淡水の両水域を持つ大阪市では、天然ウナギをはじめシジミ、ハゼ、スズキなどが取れ、現在20代を含めた40人以上の漁師がいる。環境問題に高い意識を持つ漁師も増えてきた。

 「海の環境は日々刻々と変わる」と畑中さん。下水処理の規制、埋め立てなど都会の海はさまざまな影響で流れが変わり、昨日までいた魚が突然いなくなることもある。海の環境を守るために取り組んでいるのは「まず市民に海への興味を持ってもらうこと」。市民が海を守りたいと願えば、地元、周辺の町、国など応援団が増えていくはずだ。

 畑中さんは、天然ウナギを皮切りに、淀川産シジミのしじみ汁、カタクチイワシのオイルサーディン、しらすコロッケなど次々に商品を開発してきた。3年前からは「食で淀川をブランド化する」をキャッチコピーに、同じ淀川水系の京都の漁協などとタッグを組んだ。次なる仕掛けとして、専門家と連携し、ゴリ、アユ、寒ボラを食べてもらう体験会の開催、ハゼ釣船の実施なども推し進めている。

 そして畑中さんの描く新しい夢が、2025年に開催される万博。開催場所である夢洲(ゆめしま)は、海と川の両方の生態系を持つ淀川の河口域にあたる。大阪湾に生息するカレイ、ボラ、ヨシエなどの繁殖地であり、同時に淀川に生息する天然アユやモクズガニが子ども時代を過ごす揺りかごでもある。世界中から訪れる人に、自然の恵みを育む都市部ならではの河口域の役割にも、目を向けてもらおうと考えている。

 「きれいな大阪の海に世界の注目が集まることで、大阪の人に海や川に誇りを持ってもらいたい。地元の自然を大切に感じてもらえる万博にしてほしい」。目指す先は、魚にとっても人にとっても豊かな自然が広がる未来だ。<次回は1月8日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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