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ロシアが北方領土の択捉島に高性能な地対空ミサイルを実戦配備した。択捉島には国後島とともに艦艇攻撃用ミサイルがすでに配備され、新型戦闘機も常駐する。
軍備増強により北方領土の実効支配が強まる。領土問題を解決し、日露平和条約を締結するという原則に反するのは明らかだ。
ロシアは北方領土を基地化することで、太平洋での米軍の活動を抑止し、オホーツク海に展開する露海軍の安全を確保している。
北方領土の戦略的な重要性が増していることが、背景にあるとみられる。
ロシアのそうした意図を見抜いた対露外交の再構築が必要だ。
安倍晋三前政権のアプローチは、プーチン露大統領との個人的関係を生かし、共同経済活動をてこに条約交渉を前進させようとするものだった。
1956年の日ソ共同宣言を交渉の土台とし、4島一括返還から歯舞群島と色丹島の2島返還へと方針転換した。「不法占拠」の表現を取り下げる譲歩も見せた。
だがこの間、ロシアは北方領土の軍備を強化する一方、第二次世界大戦の結果、合法的に北方四島を獲得したと認めるよう日本に迫り、交渉は頓挫した。
大きな誤算は、ロシアが日米同盟への警戒を強めたことだ。在日米軍が北方展開しないよう日本に確約を迫ったという。
前政権のアプローチが失敗した対露外交をどう立て直すか。
菅義偉首相は「北方領土問題を次の世代に先送りせず、終止符を打たなければならない」と、安倍氏と同じ発言を繰り返す。
しかし、行き詰まった戦略を検証も総括もせずに受け継ぐだけでは、局面打開にはつながるまい。菅氏としての戦略を示すべきだ。
バイデン次期米大統領はロシアに強硬な姿勢をとるとみられている。日露関係の改善は、米露対立の先鋭化に歯止めをかける安全弁になるはずだ。
日本との関係強化はロシアに利益をもたらすことを繰り返し伝えるべきだ。経済協力や技術供与の継続はその一助となるだろう。
信頼醸成を促しつつ、北方領土の返還を戦略的に決断させる。菅氏はプーチン氏に粘り強く働きかけていく必要がある。