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あなたも誰かのサンタクロースになりませんか――。NPO法人「チャリティーサンタ」(本部・東京都千代田区)は、クリスマスイブの24日、生活に困っている世帯の子どもたちに本を届ける企画「ブックサンタ」を実施する。24日まで1万冊を目標に絵本などの児童書を集めており、イブ当日、サンタ役のボランティアが各家庭を訪れてプレゼントするというもの。今年は新型コロナウイルスによる経済的な影響により、サンタを希望する家庭が増えているが、ボランティアの確保が難しくなっている。【五味香織/統合デジタル取材センター】
「ブックサンタ」は今年で4回目。本の寄付は全国307カ所の「協力書店」を通じて、誰でも参加できるのが大きな特長だ。
寄付の希望者は、協力書店で子どもに贈りたい絵本などを選ぶ。レジで「ブックサンタに参加します」と伝え、書籍を購入してそのまま書店に預ける。本はチャリティーサンタ側に送られ、届け先の子どもの年齢などに応じて仕分けされる。そして24日の夜、サンタに扮(ふん)したボランティアたちが全国各地の家庭を訪ねて子どもたちに手渡す、という流れだ。
「チャリティーサンタ」の支部は27都道府県にある。ボランティアは事前に研修を受け、サンタとしての振るまい方などを学ぶ。
12月上旬に東京都内で開かれた研修では、実際に家庭を訪問する様子を撮影した動画や衣装の身に着け方などが紹介され、スタッフが「子どもの目を見て話す」「名前を間違えない」といった注意点を伝えた。参加者同士の練習では、数人ずつのグループに分かれ、サンタ役や子ども役などを演じた。「ホーッホッホッホ、メリークリスマス!」とサンタになりきったり、子どもとの記念撮影で「ピースサインをするとサンタらしい貫禄がなくなっちゃうかな」と相談したりしていた。
参加者は大学生から60代のリタイア世代までと幅広い。きっかけは、知人に誘われたりボランティア情報で見つけたりするほか、退職後のセカンドライフでのやりがいを探す中で知った人など、さまざまという。毎年参加するベテランの中には、付けひげを使わず、自前のひげを伸ばして本番に臨むほど力の入った人もいる。
また、訪問先の保護者から、事前に子どもが頑張っていることや褒めてほしいこと、サンタの存在をどれくらい信じているかなどを聞いて把握しておく。台本はないが、サンタは子どもの名前を呼び、一生懸命取り組んだことをたたえ、目を見て「いつも見ているよ」と伝えるようにする。
以前、ひとり親の保護者からこんなメッセージが届いた。訪問の翌日、子どもが保育園で、サンタが来たことを友達に自慢していたという。「長期休暇に旅行にも行けず、先生が子どもたちにどこへ行ったか聞いた時に答えられないなど、つらい思いをさせていた。子どもが初めて友達に自信を持って言えたことだった」という喜びの声だった。
代表理事の清輔夏輝(きよすけ・なつき)さん(36)は「くじけそうな時や踏ん張らなければならない時、背中を押してくれるのは、強く心に残っている思い出ではないでしょうか」と語る。「見守られているという思いは、絶対に心の支えになるはずです。子どもたちに、『愛されていた』という記憶を残したい」とも。
また、運営スタッフの石川雄大さん(27)は「家を訪ねるまでは緊張するし、相手の子どもが驚いてしまってきちんと話せないこともある。でも不思議なことに、プレゼントをあげる側が温かい気持ちをもらえる。サンタという存在のパワーはすごい」と語った。
「チャリティーサンタ」は2008年から、保護者からの依頼を受けて子どもへのプレゼントを預かり、サンタに扮したボランティアが家を訪問してプレゼントを子どもに届ける、という活動を続けてきた。しかし、清輔さんはある研修で、ひとり親世帯や経済的に苦しい家庭ではプレゼントを用意できないケースが少なくないことを知った。「うちにはクリスマスの思い出はない」「サンタクロースは来ない、と子どもに話している」などという声を聞き、17年、現在のブックサンタの活動を始めた。
今年で3回目のボランティア参加になる木内甫(はじめ)さん(28)は、「社会にゆとりがなくなっている中、明るくしていこうという取り組みの意味は大きい」と感じているという。また「自分も新型コロナで疲れを感じている。活動に参加することで、心のゆとりが持てたら」と話す。
また、これまで本を寄付した人たちの思いはどのようなものだろうか。
今年の参加者に向けたアンケートには、「クリスマスの楽しい思い出を、どの子どもにも持ってほしい」「子どもがいないので誰かのサンタになりたい」といった声が寄せられた。自身が入院中に本に支えられたという人や、この1年間で結婚や妊娠を経験して「自分が幸せなので、おすそわけをしたい」というメッセージも。
新型コロナを意識した声もあった。「こんな状況だからこそ、子どもたちに夢の世界で楽しんでほしい」「外で遊べない、家で過ごす時の一助に」など、子どもを支えたいという思いがにじむ。
言うまでもなく今年は、新型コロナの影響が活動を直撃している。
本の配布先の家庭について、昨年の2倍となる1200世帯を募集したが、その2倍を超える3000世帯近くから応募があった。応募の書類には、失業や大幅な減収といった困難に直面しているという記載が目立ったという。
また、子ども食堂など支援団体にも本を届けることになっているが、これも希望する団体が多くなっている。当初は100団体の予定だったが、それを超える分に届けられるかは、今後の本の集まり具合次第という。
ボランティアも不足している。例年は医療や福祉などの分野からの参加が多かったが、今回は不特定多数の人との接触を避ける必要があるため、参加を見送るケースが続出。また、高齢者は重症化のリスクが高いとされることから、今年は65歳以上を断っている。支部によっては訪問先を昨年の半分程度に抑えて人手をやり繰りしているが、直前まで募集している地域もある。
だが、清輔さんの頭に活動中止の選択肢はなかったという。子どもが重症化することは少ない現状も踏まえ、サンタがマスクを着用するなど感染対策を徹底して実施しようと決めた。再び緊急事態宣言が出されるなど、深刻な状況になった場合は、最終的に訪問をやめる場合もありうるという。その場合は本を郵送し、オンライン通話でサンタと子どもが対面するなどの方法を検討している。
本の寄付は12月24日まで受け付けている。今年の訪問に間に合わなかった分は、来年活用する。
チャリティーサンタでは、ほかにも寄付や活動へ参加する方法がある。詳しくはウェブサイト(https://www.charity-santa.com/)で。
1冊の本を寄付する、あるいは自らボランティアとして本を届けることで、子どもの心に小さな明かりをともせるかもしれない。
1998年入社。岐阜支局、中部報道センター、東京社会部、くらし医療部などを経て2020年4月から統合デジタル取材センター。妊娠・出産や子育てをめぐる課題、「生きづらさ」を抱える人たちを中心に取材している。性同一性障害や性分化疾患の>人たちを追ったキャンペーン報道「境界を生きる」、不妊や不育、出生前診断をテーマにした長期連載「こうのとり追って」取材班(いずれも毎日新聞出版より書籍化)。
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