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ジャーナリズムを、聞きたい

元社会部長の小川一・毎日新聞グループホールディングス顧問が、ジャーナリストたちの活動を振り返りながらその思いを聞きます。

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マスコミとも闘った「イエスの方舟」報道 鳥越俊太郎さんが学んだ「踏みとどまる大切さ」

鳥越俊太郎さん=東京都千代田区で2013年11月5日、梅村直承撮影
鳥越俊太郎さん=東京都千代田区で2013年11月5日、梅村直承撮影

 今回から、鳥越俊太郎さんがサンデー毎日編集部時代に取り組んだ報道について見ていきます。最初は、1980年前後に社会の大きな関心を呼んだ「イエスの方舟」事件です。

 「イエスの方舟」とは、千石剛賢氏(2001年に78歳で死去)が主宰した聖書研究会をルーツとし、当時は東京都国分寺市を中心に布教活動していた会のことです。しかし、活動に熱心な会員の家族の間でトラブルが起きるようになり、家族の訴えで警察も捜査を始めました。布教活動にも支障が出たため、千石氏は78年から会員25人とともに全国を転々とするようになります。

 会員の家族は捜索願を出し、80年刊行の婦人公論に「千石イエスよ、わが娘を返せ」と家族の手記が掲載され、サンケイ(現在の産経)新聞も批判のキャンペーン報道を始めました。国会でも取り上げられ、多くのマスコミがカルト教団に見立てた報道を繰り返すようになります。会員に若い独身女性が多かったために「千石ハーレム」といった誹謗(ひぼう)中傷や興味本位の報道も数多くありました。たまたま、千石氏らが姿を消したのと同じ時期の78年11月、南米ガイアナでカルト集団「人民寺院」の信者900人以上が集団自殺する事件が起きました。その壮絶な事件の記憶があまりに生々しかったこともあり、報道は過熱していきました。

 「イエスの方舟」側も、こうした社会の誤解をとこうと、会員たちが長文の手紙をしたためマスコミに送っていました。そのほとんどが無視される中、サンデー毎日の鳥井守幸編集長は、手紙の文体、筆跡、行間に漂う真摯(しんし)さを見て、「会ってみよう」と考えます。伝えられている姿と実際は違うのではないか、と直感したといいます。

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