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男子第71回、女子第32回全国高校駅伝競走大会(毎日新聞社など主催)が20日、京都市のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)を発着点に開かれる。激戦の神奈川県の女子予選を勝ち抜いたのは初出場の橘だ。駅伝では実績のなかった公立校を就任からわずか5年で都大路に導いた元箱根ランナーの異色の指導スタイルとは。
多くの駅伝の強豪チームは練習前後に集合すると、監督が選手たちに一方的に話しかける。しかし、橘は全く違う。選手だけで丸くなって話し、練習のテーマや状況を確認する。選手の話を遠くから黙って見つめる田代監督は「自分で考えられる選手になってほしい」という信念を持つ。
川崎市立の橘はスポーツ科があってバレーボールなどの運動部活動が盛んだが、私立と違ってスポーツ推薦はない。陸上の個人種目では全国出場者を輩出してきたが、選手を5人以上そろえなければならない駅伝の強化は難しかった。前任の同市内の中学校を全国駅伝に導いた田代監督が2016年に赴任する前は、県で2桁順位が定位置だった。
田代監督は国士舘大時代は箱根駅伝に2回出場して実業団から誘われるほどのランナーだった。しかし、指導者から言われた通りの練習をこなすだけの日々にやりがいを見いだせず、実業団入りを断った。大学卒業後、川崎市で教員になると、自らの経験を文字通り反面教師として、選手の自主性を尊重する指導を行うようになった。
練習メニューの基本は田代監督が考えるが、設定タイムは各自の判断で決める。体調が悪い場合は、負荷の軽いジョギングに切り替えても構わない。「ふざけるな」「駄目」など否定的な言葉は一切使わず、選手から意見を言いやすいように「どうだった」などの問いかけを心がける。
真価が表れたのが、新型コロナウイルスの影響で部活動ができなかった春先だった。休校で自主練習となったが、個々がその環境に応じて練習メニューを決めた。例えば、金子(2年)は「アップダウンのある駅伝に対応する力をつける」と坂の走り込みを意識的に増やしたという。
都大路に向けた目標も当然、選手たちが決める。「自分たちの全力を出し切ること。そうすれば、たとえ駄目な結果だとしても次のステップになる」と吉田主将。来年度以降のチームのため、初の大舞台で経験値を得る走りをする。【小林悠太】
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男子第71回、女子第32回全国高校駅伝競走大会に出場する注目チームを紹介します。次回は18日午前7時、男子の世羅(広島)を公開する予定です。
毎日新聞東京本社運動部。1983年、埼玉県生まれ。2006年入社。甲府支局、西部運動課を経て、16年から東京本社運動部。リオデジャネイロ五輪を現地取材した。バドミントン、陸上、バレーボールなどを担当。学生時代、184センチの身長を生かそうとバレーに熱中。幼稚園児の長男、次男とバレーのパスをするのが目下の夢。
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