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コロナ対策と条例 罰則は慎重な対応が必要

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 新型コロナウイルスの感染対策として、自治体による独自の条例で罰則規定を検討する動きが複数の地方議会に出ている。

 強制力を伴う感染対策について国が議論を進めていないことへの地方側のいらだちが背景にあるとみられる。ただし、罰則は私権制限を伴うだけに、全国的見地から慎重に議論する必要がある。

 罰則規定を検討しているのは東京都議会の会派「都民ファーストの会」だ。保健所からPCR検査を受けるよう勧告を受けた人が、知事の命令を受けても正当な理由なく拒否した場合、5万円以下の過料を科す。

 また、福岡県議会はコロナ感染者に県が疫学調査や報告を求めた場合、協力を義務づける条例を超党派で検討している。やはり従わないと、過料の対象となる。

 改正新型インフルエンザ等対策特別措置法は感染対策について、原則として都道府県知事が対応するよう定める。このため、多くの都道府県は、地域に応じた自主条例で特措法を補完してきた。

 だが罰則規定は、やはり区別して考えるべきだろう。

 欧米では外出禁止を罰則つきで強制するケースが多い。これに対し、日本は事業者や個人の自主的協力を求めてきた。強制や処罰の是非について、国レベルの議論はまだ尽くされていない。

 「過料」は罰金などの刑事罰とは異なる。軽微な違反に科す行政罰だが、それでもPCR検査や疫学調査への協力を促進するための手段としてなじむだろうか。

 罰則を科して感染者や濃厚接触者に報告や検査を義務づけることは、差別や偏見を助長しかねない。過料を恐れて保健所への相談を控える可能性も指摘されている。こうした点も十分吟味しなければならない。

 休業要請を拒否した事業者を対象とする罰則導入の議論もある。全国知事会は法整備を求めているが、政府は事業者への補償問題につながることを警戒し、議論に及び腰だ。

 感染対策に実効性を持たせるための私権制限について、地方の対応がまちまちになることは適切ではあるまい。政府は地方に判断を丸投げせず、統一的な見解を示すべきだ。

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