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今よみがえる森鴎外

/21 「現代もの」の面白み 自らの本音、赤裸々に=作家・高橋源一郎

陸軍省医務局があった東京都千代田区永田町の庁舎。「あそび」の執筆時、局長だった鷗外が勤務したと思われる。参謀本部もあったことで知られる=国立国会図書館所蔵の「東京名所写真帖」(1910年刊行)より

 <文化の森 Bunka no mori>

 作家になって最初に買った個人全集は鷗外全集だった。ちなみに、作家になる前に買ったことのある全集も、永井荷風や中原中也を筆頭に、いくつかある。

 なぜ、作家になって最初に買ったのが鷗外全集だったのか、その理由は覚えていない。いや、思い出した。二〇歳頃に筑摩書房の鷗外全集を買ったことがある。全集といっても、全作品が入っているわけではなかったと思う。そのときは、鷗外の歴史小説に熱中した。『伊澤蘭軒』や『渋江抽斎』である。なにが面白かったのだろう。もしかしたら、背伸びをしたかったのかもしれない。作家になって買った全集では、もっぱら「翻訳」を読んでいた。おもしろくて仕方なかった。その理由については、いくつも思いつくことができるが、ここでは書かない。それから、しばらくして、『日本文学盛衰史』という小説を書き、鷗外を登場させることになったので、今度は1巻から読んでいった。現代小説がいちばんおもしろかった。時期により、そのときの自分の関心のありようによって、好きな作品が変わってゆくのだろう。

 「あそび」という短編をご存じだろうか。「現代もの」だが、主人公の「木村」は、役所勤めをしている作家、という想定である。つまり、鷗外本人を主人公とした小説だ。他にも、「木村」ものはあるが、いずれにせよ、木村=鷗外の本音が赤裸々に描かれた小説だ。いや、もちろん、「本音」のふりをしている可能性もないわけではないが、ここは素直に、鷗外が自らの「本音」を明かすために、この「木村」ものを書いた、と考えたい。…

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