全国高校駅伝
出場選手に血液検査 きっかけとなった「鉄剤注射」とは?
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Q 全国高校駅伝で血液検査が実施されることになった経緯は。
A 陸上関係者によると、貧血治療用の鉄剤注射は酸素の運搬能力が上がって持久力向上効果があるとされ、1990年代から一部で使用が広まりました。一方、日本陸上競技連盟は鉄剤注射が内臓に機能障害を起こす恐れがあるとし、2016年に「アスリートの貧血対処7か条」を公表するなどして警鐘を鳴らしてきました。しかし、その後も一部で継続して使われている懸念があったため、19年大会から血液検査結果の報告が出場選手に義務づけられました。血液検査の実施は高校スポーツ界では異例です。
Q なぜ鉄剤注射が使用されるのですか。
A 長距離選手は大量の発汗などで鉄欠乏性貧血になるケースがあります。また、着地の衝撃で足裏の血管の赤血球が壊れる溶血性貧血になりやすいとされます。鉄不足を補うため内服薬などに加えて、ドーピング行為に該当しない鉄剤注射を医師の処方で行うケースが懸念されてきました。
Q 鉄剤注射の悪影響は。
A 鉄を過剰摂取すると、肝臓や心臓の機能障害を起こし、心不全や肝硬変などを発症するリスクがあります。体に貯蔵されている鉄の量を反映する「血清フェリチン」が正常値でないなど影響は数年間続くと言われています。
Q 具体的な検査内容は。
A 日本陸連は19年の大会前に、選手らの検査同意書や9月以降に鉄剤注射を受けたかどうかなどの申告書の提出を求めました。さらに、大会後は5日以内に検査を受け、人体に酸素を運ぶ役割を担う赤血球やヘモグロビン濃度などの検査結果を提出するよう義務づけました。なお、20年大会は新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療機関の負担軽減などのため、大会後の血液検査報告は義務づけられていません。【構成・新井隆一】