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漆黒を照らす

大阪を拠点に国際報道に携わるフリージャーナリスト集団「アジアプレス」所属の石丸次郎さんと玉本英子さんの連載企画です。

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/108 私が大好きだった「ダエ」 夫亡くし、子ら支えたクルド女性 /大阪

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尖(とが)った性格のダエだったが、私には優しかった=2003年トルコ・イスタンブールで玉本英子さん撮影
尖(とが)った性格のダエだったが、私には優しかった=2003年トルコ・イスタンブールで玉本英子さん撮影

 2020年1月、あるクルド女性が89歳でこの世を去った。私がトルコ・イスタンブールで、マクプレ・アティラさんと知り合ったのは25年前。取材でお世話になった通訳のジャマルさん(52)の母親だった。ときに家に泊めてもらい、料理や洗濯をともにしたこともあった。私は彼女のことを「ダエ」と呼んだ。クルド語で母という意味だ。毛糸のベストを着こみ、頭にまいたスカーフの下には三つ編みの白髪がのぞく。気性の激しい性格で、周りにいつもけんか口調だった。

 一緒に青空市場へ行ったときのことだ。私が野菜を買おうとすると、ダエは大声で店主をののしり始めた。店主が外国人の女の私を見て値段をごまかそうとし、それを見逃さなかったのだ。学校へ行けなかったため読み書きはできなかったが、鋭い観察力を持っていた。

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