連載

余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

連載一覧

余録

子どもが「王様は裸」とばらしてしまう…

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷

 子どもが「王様は裸」とばらしてしまうアンデルセンの「皇帝の新しい服(裸の王様)」だが、さて結末はどうだったか。大人たちもやっぱり裸だと叫び出すと、王様にもみんなの言う通りのように思えてくる▲だが考えついたのは、「今さらパレードをやめるわけにはいかない」だった。王様はなおさらもったいぶって歩き、侍従たちはありもしない裳裾(もすそ)をささげて進んでいった――王様とその側近たちだけはフィクションを演じ続けたのだ▲「今さらやめられない」。最近もどこからかそんな声が聞こえたような気がする。というのも、コロナ感染拡大が止まらず医療崩壊の危機が迫る中、GoToトラベルへの菅義偉(すが・よしひで)首相の異様なまでの固執が人々を不安にさせたからだ▲小紙の世論調査によれば、内閣支持率が40%にまで落ち、49%に跳ね上がった不支持率と逆転した菅政権である。とくにそのコロナ対策への不満は大きく、GoToの中止を求める向きは67%にのぼったから問題の所在は明白だろう▲思えば人の移動と感染の関係を否定し、「GoToが悪者になった」と嘆いていた菅首相だ。感染症の専門家はもちろん、医療現場の苦境を心配する国民も、この期(ご)に及んで危機感の衣をまとわぬ「裸の王様」にあぜんとさせられた▲さすがにきのう、年末年始のGoTo全国一斉停止を表明した首相だが、感染抑止のためならば、なぜ直ちに踏み切らないのか。自分が裸と分かった後にも、なおもったいぶるのは人のさがなのだろうか。

あわせて読みたい

注目の特集